文化祭バトル勃発 3

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 理科室に残された卿子は、突然の知己脱走に狼狽えた。 「……ど、どうしましょう、クロード先生」 「大丈夫ですよ。あの格好です。どこにも行けやしませんよ」  平然とクロードは言う。 「今、軽くパニクってるでしょ? 下手に探しに行くと、余計に逃げると思います。知己が少し冷静になって、ここに戻ってくるのを待ちましょう」 「はあ」  卿子が手元の半円状の物体に視線を落とす。 「……パット4枚計画は、やはりダメでしょうか」 「無理そうですね。諦めましょう」 「バインバインにしたかったのになー……」  まったく異性として見られない卿子の発言に (知己、もう一縷の望みもないようです……)  とクロードは確信した。  そこで理科室のドアがカラリと開いた。  早々に落ち着きを取り戻した知己が戻って来たかと、卿子達は喜んで振り返った。  が、そこには、頬染めて見たこともないほどに動揺した俊也が立っていた。  廊下を指さし 「なあ、なあ、なあ、なあ! 今の超絶美人……誰?」  鼻息荒く、俊也が訊いてき。 「は?」  卿子が空耳かと聞き返した。 「今、廊下ですれ違ったお姉さん、誰? あんな先生いたっけ?」  八旗高校に女子生徒は居ない。  居るとしたら、卿子などの女性職員のみである。  クロードは意味が分かって、ぶぅっと吹き出した。 「あ。そういやなんか泣きそうになってたけど、あんたら、ここで何してた?  こんな人気(ひとけ)のない所で女泣かすようなマネとか、担任が知ったら怒ると思うぜ」 「はあ?」 (それ、君が言う?)  春先、俊也に寸分たがわず同じことをされた卿子が、憮然として答えた。 「何、言ってんですか?! あれは、ひっ……」  卿子の口を突然クロードが押えた。そして 「ラノさんです!」  卿子の声をかき消すように言った。 「ラノさん?」  俊也が訊き返す。 「宗教学の先生ですよ。2学期から期間限定で来ることになったんです」 「あ、それでシスターみたいな服、着てたんだ」  何故か納得する俊也。
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