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「……クロード先生?」
卿子が訝しんで聞くと
「知己だとバレる訳にはいかないでしょ?」
とクロードが小声で答えた。
「あ、そっか」
卿子はクロードの突然の行動を理解した。
「ここは全力で誤魔化しましょう」
心なしか……いや、絶対に楽しんでいるクロードの様子を、卿子は感じ取った。
「やっべー、何、あの人。マジ清楚なお姉さん。いや、シスターって言われて納得した」
(シスター? ……そんなこと一言も言ってませんよね、私達)
卿子が視線で問えば、クロードは黙って頷いた。
「俺、『宗教学』ってマジ面倒そうだし、絶対に寝る自信あったから取るまいって思ったけど……ちょっと取ろうっかな……」
「は?」
卿子が再び驚いた。
「あ、いやいや。独り言っす」
大きな声で独り言と言われても、聞いてしまった卿子達はリアクションに困る。
「次、ラノ先生、いつ来るのかな?」
俊也は平静を装って訊くが、下心はバレバレだ。
「文化祭には来るって言ってましたよ」
「……! ちょ、クロード先生!」
確かに嘘はついていないが……あまりの悪乗り発言に、卿子は戸惑った。
「おぉ、一週間後じゃねーか。楽しみー。またラノ先生に会えるのか……」
純粋に喜ぶ俊也に、いくら悪ガキだと思っても卿子は心が痛む。
だが、クロードはそうでもなさそうだ。
「ところで先生は?」
「知己のこと?」
「そう。そういや、今日はまだ敦達も来てないんだな」
キョロキョロと俊也は理科室内を見渡した。
「須々木君の探している知己に、文化祭ミスコン前だから『生徒は理科室立ち入り禁止』と言われませんでしたか?」
「え? そうなの?」
「HRで言ってませんでしたか?」
「俺がそんなん真面目に聞くと思う?」
(思わない)
声に出すのは憚られたが、クロードと卿子は同じ思いを顔に出していた。
「ここに来たのが知己にバレると怒られるのは君の方です。早く教室棟にお帰りなさい」
「それもそうだな。俺がここに来た事、絶対に言うなよ」
(言うも言わないも、もう会ってるし……)
卿子がまたもやリアクションに困っている間に、俊也はあっさりと帰っていった。
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