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「俊也……帰ったか?」
そっと非常階段側から知己が戻ってきた。
「あ、おかえりなさい」
と卿子。
「まさか、あそこで俊也に会うとは……」
乱れた襟を押さえながら廊下で俊也とすれ違った時、やばいと思ってさらに加速した。
何か言いたげな俊也を振り切ろうと、そのままマックススピードで全力疾走。きっと生徒指導の先生に見つかったら怒られるレベルの走りっぷりで知己は校舎外まで逃げ出し、そのまま建物沿いに裏に回った。
その後は非常階段脇で理科室から俊也が出ていくのをひたすら待っていた。
「うまく誤魔化しておきましたよ」
とクロード。
その横で卿子が詐欺師を見るような目になっているのが気になるが、とりあえず知己は
「そっか。サンキュ」
と言った。
「さ、当日の衣装は決まったし、脱いでください」
「え? これでいいのか? せっかく用意してくれたのに、他のは着なくていいのか?」
「うん? 知己は、もしかして着たいんですか?」
「まさか。どっちかというと、もうこれでいい」
お腹いっぱいだ。
「知己のその姿を期待する人が現れましたので、むしろそれ以外はダメになりました」
期待する人?
「長髪ウィッグ付けてたのが幸いしましたね」
「はい。ぱっと見た目は全くの別人みたいですし」
?
卿子とクロードの会話に、疑問符は浮かぶばかりだったが、とりあえず仮装の路線は決まった。
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