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「後ね、実は用紙の角を1つ落としているんだ」
「なんで?」
「不正に作られた投票用紙を弾くため。パッと見分かんないけど、重ねたら、切り落とした角度が違うものはすぐに分かるでしょ?」
「そこまでするか?」
「結構、僕ら真剣にやっているんだからね」
なるほど。
見よう見まねで適当に切り落としたものなら、用紙を重ねた段階で、切り落とされた角度の違いで弾ける。更に世界に一つしかない俊也お手製の印鑑の有無で正当な用紙かどうか判断する二重の不正防止策だ。
「もしかして、それも俊也が……?」
「ううん。こんな複雑なのを考えられるのは、敦ちゃんだよ」
「……そうか」
軽く俊也がディスられているが、まあ、いい。
(不正大嫌いな敦らしいな)
と、知己は思った。
「あ、そだ。先生の所に偵察に行った俊ちゃんが」
(そういえば、一週間前に理科室ですれ違ったが、あれは偵察に来ていたのか)
と知己は思い出していた。
(クロード達にうまく誤魔化してもらって良かった)
が
(ん? 不正嫌いな癖に俊也を偵察に派遣しやがったのか? なんか、ずるいな!)
なんとも割り切れない思いに駆られた。
敦も梅ノ木グループの御曹司。
(やはり金持ちの考えることは、俺には分からん)
知己は無理やり納得することにした。
「ノー収穫で帰ってきてから、なんか様子がおかしいんだよね。先生、なんか心当たりある?」
章は心配そうに呟く。
(ノー収穫……収穫なしという意味か)
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