悪名高き八旗高校 3

12/13

242人が本棚に入れています
本棚に追加
/778ページ
「あ、それと確か『平野先生は手を出せないけど、こっちは出せる』とか変な相談をしていて。私に気付いたら『聞かれちゃった?』とか言っているし……それで私、怖くなって逃げなきゃって思ったんです」  不安や恐怖から解き放たれて、卿子は堰切ったように喋りだした。 「坪根先生、落ち着いて。まずは、須々木と吹山の話を聞きます。そのあとでお話を聞きますから」 「……はい」  悔しそうに口を噤む卿子だったが、それは知己を信頼してのことである。卿子の気持ちを感じ、知己は俄然この場を冷静に、かつ正しく収めようと思った。 「それから?」  知己は、俊也達に向き直った。 「え? それからって……?」 「それだけじゃないだろ? それだけで、きょ……坪根先生の服がこんなに汚れているんだ。その後、何があった?」  建物に入るときに、卿子が服をパタパタとはたいてあらかたの土は落としたものの、美しいペパーミントグリーンは、いまやくすんだ薄緑である。 「えーっと……どうしたんだっけ?」  俊也が章に救いを求めるの視線を送ったが、章は目を反らした。 「なんだ、須々木。自分で言えないことをしたのか? だったら坪根先生に聞くぞ。それでいいか?」  卿子に聞いたことを「真実」と受け取って良いかの確認だった。  章の助けは望めそうもない。それで俊也が 「あ、いや……。頭突きされたんで、びっくりして手を離したら、この先生が勝手に転んだんだ」  雑な説明をした。 「違います! 私、叩かれたんです!」 「ああ、この頬が赤いの、その所為なんですね」  知己はすかさず携帯で卿子の頬の写真を撮った。そして、俊也に向かい 「お前の頭突きされた所も写真に撮りたいが、どこだ?」 「えーっと……たぶん、ここら辺……かな?」  顎のあたりを指した。  同じように写真に撮って見たものの、さっぱり痕が分からない。
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加