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【10:30】
「お。真面目に働いているな!」
知己が甲斐甲斐しく働く俊也達に声をかけた。
ミスコン開催は11時だが、出場30分前にメイクなどの準備に参加者とそのサポートが体育館に入り、準備を始めていた。
卿子が
「本気のメイクには1時間はかかるのに!」
と言ってたが、その辺はDKの考えること。
時間をかければ、それなりに映えもするだろうから、参加する条件を合わせるお達しがあった。それらはすべて「参加要項」に書かれていた。この「参加要項」には体育館舞台袖には大勢は入れない理由で、参加者1名につきサポートスタッフは2名までOKとなっていた。
着替えやメイクには場所を取るので、更に奥にある体育館の裏の講堂を特別に参加者控室にしている。床にブルーシートを張り、保健室から仕切りを借りてきて、着替えやメイクができるようにしている。
2-3主催のミスコンは当日よりも前日準備の方が大変だったようだ。
知己のサポートスタッフは、クロードと卿子だった。
クロードがトランクを、卿子が帆布のバッグとコスメボックスをそれぞれ持っていた。
そこに時間になったからだろう。2-3代表でエントリーしている敦もやってきた。
「教師め。逃げずに来たか」
「お前の週休3日制を阻止するために、な」
「ふん。返り討ちにしてくれる」
なぜだか、前年度優勝者のような大きな態度の敦に、珍しく知己も応戦していた。
敦にもメイクや衣装のサポートスタッフが二人付いていた。
だがどうみても八旗高校の人間ではない。外部の者だ。しかもその道のプロっぽい感じの。
「外部の人間、雇っていいのか?」
知己が章に訊くと
「外部の人間じゃない。れっきとした梅ノ木グループコスメ研究班の者だ」
敦が身内をアピールしてきた。
「それを、れっきとした外部の者って言うだよ、敦ちゃん」
章に突っ込まれて、敦が一瞬「うぐっ!」と怯んだ後に
「だがっ! 『参加要項』に『外部の者を雇うの禁止』と書かれてなかったもん!」
と躍起になって言い返した。
「うーん。書かれてないんじゃ仕方ないかー」
あっさりと章が認めた。
「来年は、その辺のこともきちんと書いておくことにしよう」
(え? 来年もこれやるの?)
その時は、全力でこれも阻止しようと知己は心に決めた。
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