文化祭バトル勃発 6

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「本日はミスコンにお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回特別に、たまたま居合わせたミス慶秀大にも来ていただきました。……えーっと、お名前は……」 「御前崎美羽です」  美羽が小声で教えたが 「個人情報なので、伏せておきます」  と、章がさらっと流した。  こっそり教えた美羽が、ますます居心地悪そうにしている。 「ミス慶秀大。なんか喋りたいことは、ありますか?」 「え? あの……」  急にコメントを振られた美羽がドギマギとしていたが 「あ、いいんですよー。綺麗なお姉さんは居てくれるだけで盛り上がるので」  さっきの振りは何だったんだ? な展開で話を戻した。  それでも章に弄られた美羽の反応が可愛かったらしく、わぁっと盛り上がっている。 (御前崎……。気の毒に……)  普段嫌というほど弄られている知己は、美羽に同情の念を禁じ得ない。  章の司会は2年3組満場一致の見解。 (やばいな。確かに章は喋ることは得意だが、弄り倒す悪癖があるからな)  知己がハラハラしていると、ステージ下の門脇が小指から順に折って拳を作って見せた。指の関節の音がここまで聞こえてきそうな迫力だ。  それを見て章は美羽を弄るのをやめた。 「ミスコン開催決定より2年3組一丸となって準備・計画を進めてきました。こちらの舞台袖を見ました所、各クラス代表のそうそうたる出演者。彼ら……いえ彼女らを見たら、一目瞭然、どのクラスも、こんな謎の女装ミスコンに『どんだけ暇なの?』って感じに心血注いできたことがうかがえます。  皆さん、お手元の投票用紙の準備はいいですか? おひとり様一枚限りの大切な投票用紙。  どのチームも真剣です。謎の女装ですが、真剣なんです。優勝チームには美味い棒一年分とトロフィーが授与されます。  美味い棒一年分、欲しいかー?!」 「おーーーーーー!」  舞台袖の参加者と体育館の観客が応える。 (え? 欲しいんだ?)   知己が周りの生徒のノリに戸惑っていると 「投票にはどうぞ、心打たれた女装に清き一票をお願いしまーす!」  と、選挙カーのノリで章が酷い挨拶をした。 (今、猛烈に章の歯に衣着せたいなぁ……)   知己は真剣に思ったが、なぜかフロアの観客も舞台袖の参加者も一斉に 「うぉぉぉぉぉぉぉ……」  と野太い声を上げて、盛り上がっていた。 「それでは、第1回八旗高校ミスコンを開催します」  章の宣言に合わせ、高らかに某RPGゲームのオープニングファンファーレが鳴り響いた。
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