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エントリーナンバー3番は、黒光りするショートパンツにロングブーツのSMチックなコスチュームに身を包み、黒髪ロングストレートヘア。そして、鞭を持って現れた。
「こんなところで女装した女王様は、どこのどいつだーい?」
「あたしだよー!」
突然
「ア゛ーーーーーーーーっ!」
と叫んだ後に、なぜか逆立ちをして
「戌神家!」
のポーズを決めた。
4番は白い長髪を三つ編みにして、青いドレスを着て、歌い踊った。
「♪ありのーままのー姿見せるのよー♪」
彼(?)が歌い、腕を伸ばすとサポートスタッフがそのタイミングで白い紙吹雪を飛ばす。
映画「どんな雪の女王」のシーンを完コピしていた。
謎のシャアアアアアアという吹雪の効果音、ピキーン、パリパリ……と凍り付く音が絶妙に笑いを誘った。
大爆笑に包まれる体育館に、知己は
(どうしよう。俺、全然ダメかも……)
と震えあがっていた。
同じく、ステージの端の美羽は
(一体、私は何を見せられているんだろ?
いや、これ、めちゃくちゃ面白いけど……。なんか私、ここに居る意味あるのかな? むしろ居なくてもいいんじゃないかな?)
と、「ミスコン」と言いつつも、なぜか宴会芸のオンパレードに場違いなものを感じていた。
その末に
(俺の)
(私の)
((存在って、何だろ……?))
と自分の存在意義に疑問を持ち始めていた。
「さあ! いよいよ次は教師代表、我らが平野知己先生の出番だー!」
ハードルを上げるような紹介をする章を、忌々しくさえ思う。
体育館の二階席右側方向からヤジが上がった。
「おいおい、なんで教師がしゃしゃり出てんだ?」
「文化祭って生徒のお祭りだろ? 目立ちたがりなおっさん教師だな!」
「ひっこめー、出てくんな! おっさんの不細工な女装ー!」
悪意丸出しで、ゲラゲラと嗤って囃し立てた。
門脇が、騒ぎ立てる男たちをギロリと見る。
(……よし。今、言った奴らの顔は覚えた。後でぶっ飛ばそう)
と思っていると
「今、文句たれたヤツ……」
章がマイクを通して、静かに語り掛けた。
「じゃなかった、文句をたれたお客様。これは2年3組の出し物なんです。担任が出るのもOKだし、これは文化祭運営委員会、校長も認めてのことです。むしろ文句を言う君たちが、しゃしゃり出てくんな、ひっこめー! です」
真剣な章の淡々としたトークに、これまでのお祭り騒ぎが一気に冷え、静まり返った。
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