文化祭バトル勃発 6

9/12

242人が本棚に入れています
本棚に追加
/778ページ
 知己はヴェールを手に持ち替え、この一週間、卿子やクロードに教わったダンスを二人の演奏するロック・カノンに合わせて踊った。  星の数ほど実験をしたことある知己だが、ダンスなどやったことなどない。やったとしてもフォークダンス程度だ。そんな知己に手取り足取り教え、サポートしたのはそういうのが得意なクロードであり、卿子である。  素人の知己でも無理なくやれて、見栄えのするダンスステップや動きを考えてくれた。素人丸出しの知己のダンスを、ほどよく誤魔化し優雅に見せられるようヴェールを使うアイデア出したのも二人だ。  知己は時には大胆な動きでドレスの裾を掴んで翻えし、時には長いヴェールをストールのように纏ったりあるいはなびかせたりして、見る者を魅了した。大胆な体の動きに合わせて、三つ編みの髪も舞う。先ほど4番と被る髪型だったが、知己はその動きさえも利用した。 (ガチガチに緊張して、とても動けないかと思ったが……)  実際は、違った。  一週間、音楽に合わせて叩き込まれた動きは、音を聞いただけで、自然に体が動きだす。  卿子、クロードの教え方や振り付けが巧かったのもある。二人の生演奏も花を添えた。  知己の人見知りだの緊張など、出てくる暇もなかった。  色々考えるよりも先に手足が動いていた。  客の中には、最初クラッシックかと敬遠気味の者も居たようだが、ロックとなれば話は別だ。  ポピュラーなカノンのメロディ故に聞き馴染みもあった。知己と共に軽くステップを踏むような盛り上がりようで、ステージ端の美羽さえも、椅子に座りつつも足がリズムを刻んでいた。
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加