文化祭バトル勃発 6

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 知己が舞台袖に戻ると、待っていたのは後半エントリーナンバー6から10までの参加者だった。  その中でもとびきり目を引くのは、タータンチェックのアイドル風ワンピースに身を包み、ゆるいウェーブの栗色の髪をハーフアップにした梅木敦だ。ミスコン開催決定当初から優勝者大本命の呼び声が高い。正直、6番から9番のごっつい女装男子達も、敦の存在に気もそぞろだった。  可憐な見かけの敦が両腕を組み仁王立ちで、戻ってきた知己に 「……ちっ」  体育館の喧騒のさなか、聞こえるほどの大きな舌打ちをして出迎えた。 「罵倒されて、おとなしく辞退でもすればいいものを」  一度は完全に冷えた体育館だったのに、知己のアピールタイムで一気に盛り上がったこの騒ぎが気に入らないらしい。 「そんなことしたら、お前の自主的週休三日を阻止できないだろ?」 「調子に乗んなよ」 「乗ってないよ」 「大体ヴェールとか小道具使いやがって、狡いぞ。教師!」 「それをいうならサーキュレーター使ったり、紙吹雪使ったり、コスプレしたりした奴らの方がよっぽど大がかりじゃないか?」 「参加要項に書いてなかったから、いいんだよ」 「ヴェール等の小道具を使うなとも書かれていなかったが」  忌々し気に文句言う敦と冷静に対応する知己。  先にキれたのは敦だった。 「えぇい、ああ言えばこう言いやがって! 俺のアピールタイムを見て、びっくりすんなよ! 絶対に俺の方が綺麗なんだからな!」  謎の着地点に話を持っていく敦に 「敦ちゃーん。裏で騒がないで。司会、進めにくいよ」  緞帳の脇から顔を出した章が諫めた。 「この教師が悪い」  敦は知己を指さして言うが 「どう頑張っても、敦ちゃんの言いがかりにしか聞こえないよ」  章の真っ当な意見しか返ってこなかった。そうなると 「ちっ! ……章のばーか」  最終的には幼稚な悪口を言って、敦は口を閉ざした。
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