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「はいはい、ばかで結構。
えーっと、6番の人は3年3組の和田君だったね。準備はいい?」
敦を軽くあしらうと、章は次のエントリーの者に声をかけた。
「うーっす。和田、いつでも行けるっす!」
野太い声で、トラジマビキニとブーツを履き、緑のかつらをつけた和田が返事をした。手にはプラスチック下敷きとアクリル毛糸のマフラーを持っている。
(うわー。何をするか丸わかりだな)
知己と真逆に露出多めのコスで勝負に出ている。
しかし、和田は毛深い男だった。ジャングルのような胸毛のおかげで、ビキニ姿は別の意味で目のやり場に困る状態だ。
案の定、和田は「だーりん、お仕置きだっちゃー!」の雄叫びの後に、下敷きをマフラーでこすって静電気を溜めた。手始めに自分のサポートスタッフを、次にはステージ近くの嫌がる観客と無理矢理握手しては、バチィッと静電気をスパークさせるという、はた迷惑なアピールをしていた。最後にはステージ端の美羽に狙いを定めた。じりじりと和田は近寄ったが
「嘘。やだ……。来ないで」
怯える美羽があまりにも愛くるしかったのと、その下の門脇がものすごい勢いで睨んだのとで美羽には攻撃を諦めた。代わりにアピールタイムシメの餌食に選ばれたのは司会の章だった。美羽の代わりに静電撃を受けた章は
「3年生の和田君は、もう二度とミスコンに出ないでくださーい」
と冗談めかしてめいっぱい本気のコメントをした。
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