文化祭バトル勃発 7

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「敦様も激かわだったけど、俺は絶対に平野先生押しだな」 「そりゃ、俺だって先生に入れたいよ。だけど梅ノ木グループに逆らっていいのか?」 「だって……投票用紙、無記名だぞ」 「……そっか」 「……そうだよな」 「そう、だよなー……」  体育館の出入口付近には、役所から借りてきたという本格的な投票箱が3つ並んでいた。その向こうに、俊也が 「投票ハこちらニお願いシャース」  店舗の入口に付いたセンサーのように、人が通るたびに決まり文句を繰り返していた。 (ラノさん……平野先生……ラノさん……平野先生……)  頭の中のメリーゴーランドでは、黒いドレスのラノと白衣を翻す平野知己が白馬に乗って、俊也ににこやかに手を振っている。 (ラノさん……平野先生……。俺の恋心を……返せー……)  不意に怒りがこみ上げ、拳を握りしめていた。  知己のステージからずいぶんと時間が経つ。時差で憎しみに近い感情が芽生えていた。  運悪く、そこに参加者一行がぞろぞろと体育館から出てきた。  残念ながら、女装はまだ解かれていない。  開票後のコンテスト結果発表まで、そのままでいなくてはならないのだ。  季節は11月。  秋風に吹かれて、トラジマビキニの和田は、寒そうにアクリルマフラーを首に巻き、なんだか変質者みたいな格好になっていた。 「あ、ラノさん……!」  知己の姿を見て、思わず俊也は声に出してしまった。 「誰だよ、それ」  当然の知己の反応に 「じゃなかった……悪徳教師ぃ!」  メリーゴーランド状態の脳内のままに俊也が罵った。 「それも誰だよ?! もしかして俺か?」  謂われない俊也の罵声に知己も反撃した。 「女装以外何もしてねえぞ。むしろ俺は被害者だっつーの」  胸の辺りにパットを合計4枚も重ねて縫い付けられて、フカフカする違和感を感じる。めちゃくちゃ気持ち悪い。ちょっとだけ温かい気もするが、断じてこの心地よさを受け入れる訳にはいかず、知己は切ない目で胸元を見た。
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