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「チクショウ! スタイルいいな、このヤロウ!」
パット4枚重ねの乙女(?)の秘密を知らず、出るとこ出ているラノさん相手に脳内メリーゴーランド状態の混乱したままに俊也が言うと
「須々木君。褒めるか貶すか、どっちかにしなさい」
横からクロードが諭すように言った。
「……1ミリも褒められた気がしないんだが」
俊也のややこしい事情を未だに分からない知己は、ひたすら複雑な表情を浮かべた。
投票をする者と、エントリーした者がごちゃごちゃと入り混じっているためかなり体育館の前が混雑し始めた。
「女装の皆さん。後3時間はそのままです。文化祭見に校舎に入ってもいいし、投票の呼びかけでうろついてもいいですよ。ただし、その恰好で」
章が混雑を解消させようと、声をかけた。
投票締め切りまで残り2時間弱。
「あ、和田君はあまりにも可哀そうだから、コートは着てもいいですよ」
優しい言葉にみせかけて、コートの下はビキニとブーツだなんて変質者そのものの格好だ。それを全力で勧めている。
(絶対に、静電撃の仕返しだな……)
章の性格を知る俊也と知己は、密かに思った。
「どーだ、章。俊也。そして屁理屈教師!」
エントリーナンバー10番の敦が、参加者の一番最後に現れた。
「俺のダンスを見たか! すっげ可愛かっただろう? この一週間、めっちゃくちゃ練習に明け暮れた成果だぞ! 俺、凄いだろう?!」
敦もそれなりに努力したようだが、見かけは壮絶な美少女なだけに、言い方が酷過ぎる。残念な空気が漂っていた。
「はいはい。あー、可愛い、可愛い。あー、凄い、凄い」
章がおざなりな返事をすると、
「むかつく。もういい! 俺は『最後のお願い』に行ってくる」
腹を立てた敦が、怒りつつ、選挙カーみたいなことを言って校舎の方へと向かった。
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