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「安心して、先生。僕が何の策もなく、先生をけしかけると思う?」
(……なんか、安心できない物言いだな)
章の発言が、どことなく物騒なのは気のせいか?
「この大人数がサクラだとすると……。ふふふ。保険かけといて良かったかも」
敦に負けず劣らず、章は暗黒微笑をたたえて呟いた。
「あ、蓮様。先生との写真もいいけど、投票もして行ってね」
「おう。もちろんそのつもりだ」
門脇は、胸ポケットにしまっていた投票用紙を章にちらりと見せた。
それを見て微笑む章だったが、
「おーい。吹山。ちょっと15時からの発表の打ち合わせをしたいんだが」
体育館から、会場スタッフの生徒に呼ばれた。
「じゃあ、また。打ち合わせに行って来ます」
章は門脇に軽く会釈し、体育館のスタッフの所へ行った。
(普段、教師にも会釈なんてしないくせに)
と知己が思っていると
「あの子、マジで門脇のこと、リスペクトしてんだなー……」
菊池も感心して呟いた。
「この『勝てば官軍』男のどこがいいんだ? 理解に苦しむなぁ」
菊池が首を捻っていると、知己が
「そこがイイらしい」
と答えた。
出会い頭に問答無用に殴られてからリスペクトし、「門脇会いたさ」に八旗高校を受験した経緯まではとても長くて語る気になれない。
「ま、いっか。せっかくだし投票していこう」
菊池が誘うと、美羽と大奈が賛成した。
「そだね。その後も時間あるし、校舎内の方も見にいこう」
「先生。なんか奢ってくれるなら、私、先生に投票しちゃうよ」
「公職選挙法に違反するから、しない」
大奈の冗談を真に受けて、知己が断った。
「ちぇ。お堅いんだから」
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