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文化祭バトル勃発 8
【15:00】
いよいよ投票結果発表の時間になった。
またもや体育館は、異常な熱気と野太い声援で包まれている。
ステージの端には、ゲストの御前崎美羽が戻ってきている。
当然、門脇達もその下に居座っていた。
ステージ上には、司会の章と未だ女装を解けないで困っている者9名。それと1人仁王立ちで勝利を確信している敦がずらりと並んでいる。
(あー。もう何でもいいから、早く終わってくれー……)
クラス代表でやむなく女装。
ステージに並ぶ参加者だって、分かっているのだ。「ネタ」で勝負なら話も違うが、何せ「ミスコン」だ。「女装」だの「美」だのという点で競っても、超絶美少女の敦に敵うはずなどない。だから、単なる受け狙いで勝負をしているだけの自分達に票が集まるはずもない。
(どうせ、優勝は梅木敦だろ)
(あいつが負ける戦を仕掛ける訳がない)
(素でも十分可愛いのに)
(下手すりゃ、その辺の女子よりも可愛いぞ)
誰もが思っていた。
(唯一勝てるとしたら……)
ステージ上の知己を、横目でこそっと伺う。
(今年の理科担だよな……)
憂いを帯びた表情で知己は、そこに立っていた。
気になっているのは、章の言ってた「保険」とやらだ。
(章のことだから、敦の地雷は踏まないだろうけど……何をする気なのか、心配だな)
「レディース……」
ステージ上の参加者をわざと煽るように掌を向けた後
「あーんど、ジェントルマーン!」
今度はフロアの観客席に向かってオーバーアクションで言った。
確かにフロアに美羽や大奈以外の女性という女性は見えなかったが。
(いいから、早くしろ)
(吹山……いつか絞める)
何人かの参加者が章を睨む中、知己は
(不本意な女装している奴らばっかりだというのに。無駄に敵を増やすな、章……)
一人、これからの章の学校生活を心配していた。
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