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「ほぼほぼクラスの身内票で終わるのでは……と懸念される中、無記名ってことで意外にも裏切り者は多く、票は思いっきり割れました」
むしろ敵を作る言い方しかしない章に
(言い方っ!)
知己は冷汗が出た。
「4位以下は、すごく悲しい結果ですので、本人たちの名誉のためにも秘密にしておきます」
(名誉?)
そんなものがあるなら、初めから女装してネタを披露することもあるまい。
「……ということで、3位から紹介します。3位はぁ……」
章のタメに合わせて、ドラムロールが鳴る。
(本当にうちのクラスのやつら、勉強はしないくせに、こんなことには一生懸命なんだから……)
ステージ上を旋回するスポットライトの光、効果音、凝った演出と綿密な打ち合わせ。
知己は、教師としてこれを褒めていいものかどうか悩んだ。
「3位、12票」
(3位で12票?!)
想像するに、確かに4位以下は悲しい結末だ。
「来年はもう出たくても出られません。有終の美を飾りました、3年3組・和田君です!」
章のコールと共に、ドラムロールが止まり、スポットライトが和田を照らし出した。
「よ゛っじゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」
コートにマフラー、中はビキニ姿の怪しさ満載の和田が雄々しく拳を突き上げた。それに呼応し、会場の一角に居た3-3の『和田を応援し隊』も
「和田ぁ! よくやったー!」
歓喜とねぎらいの雄叫びを上げた。
だけど、会場に居る誰もが
(可哀そうに、和田。すっかり鼻声じゃねえか?)
和田本人とその友人たちの喜びをよそに、ひたすら憐れんでいた。
「続きまして、2位の発表です」
章が次に進めると、またもやドラムロールとスポットライト旋回が始まった。
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