文化祭バトル勃発 8

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「256票、我らが2年3組担任・平野先生ー!」  今度はスポットライトが知己にとまった。  敦のようなクォリティ高いステップなど一つもなかったが、誰もが知っている曲のロック調。それに合わせての優雅な雰囲気にヴェールを使った効果的な動きが強く印象に残った。  大健闘だ。  わぁっと歓声が上がり、体育館中から拍手も沸き起こった。  もちろん、ステージ端の特別席の美羽達も大喜びだ。 「凄いですねー、平野先生。全校生徒298人の生徒数でこの票数はマジ快挙ですよ」  章が褒めるが 「あ、うん……」  知己は、曖昧な返事だ。 (2位じゃダメなんだ……。敦に勝てなかったら、敦は学校に来ない……)  練習に付き合ってもらったクロードや卿子にも申し訳なく思う。 「票の中には、『ラノさん』と書いたものが10枚くらい混じってたんですが、どう思われます」  章が知己にマイクを向けた。 「『ラノさん』? 何? それ?」  暗く沈む知己は、未だに『ラノさん』をよく理解できていない。 「俊ちゃんがアピールタイムの途中で、『ラノさーん!』って叫んだでしょ? あれで先生の女装の時の源氏名は『ひ』だと解釈しちゃった人が何人も居たみたいで……」 (なんで、章は『源氏名』なんて言葉を知ってんだ?!) 「その人たちが『ラノさん』で投票したみたいです。一応、それもカウントしてます」 (ん? と、いうことは。俊也が会いたがっていたのは……?)  恐ろしい考えに行きついて、知己は青ざめた。 「いーんじゃねえ?」  両腕を組んで、敦が不敵に笑いながら言った。 「ラノさんでも平野先生でも何でもいい。全部ひっくるめて有効票にしたらいい。俺は全っっっっっ然かまわねえ」  2位の発表後なので、すっかり勝利を確信している。  むしろ「ここまで譲歩してやっている。すげえ。俺、寛容」みたいな不遜な態度まで醸し出している。 「はいはい。敦ちゃんが超ムカつくので、先を進めますよー!」  章が作り笑いで司会を進めると 「章。今、本音がポロリ」  さすがに知己が突っ込んだ。 「いいんですよ、これは『ドキッ! 男だらけの女装ミスコン』なんだから。僕の本音のポロリくらい有っても」 (絶対にこいつ、昭和生まれだろ?)  章の年齢詐称疑惑が知己の中に芽生えた。
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