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「ふふっ、それを運任せにすると思う?」
「あぁ?」
「もちろん、抜かりなーし!」
(絶対に先生の名前を書く人物に渡したもんね)
章はちらりと門脇を見て、どさくさに紛れてウィンクをした。
敏感に察した美羽が
「あの子、なんなの!? 生意気!」
ステージ端で、カッとなって拳を握りしめる。
「ん?」
章の視線に気付いた門脇が
「もしかして、俺の投票用紙か……?」
菊池を殴る手をとめて、考えた。
そういえば、章からもらった投票用紙の角に☆マークがあった気がする。
「つり目野郎に渡したぞ」
「え? 待って。どうして、俊ちゃんに……?」
つり目=俊也。
思ってもみなかった門脇の行動に、章は焦燥を隠し切れない。
「俺の投票用紙、みんなのと違うって言ったら、親切に自分の分と取り換えてくれた」
「嘘っ! 俊ちゃん……?」
思わず俊也を探してみた。
慌てる章に、
「ふふふ。正に『策に溺死』状態だな、章」
聞きかじった言葉で敦があざ笑う。
「それを言うなら『策に溺れた』だね、敦ちゃん。なんとなく知っているだけで使うと恥ずかしい目に遭うよ」
今が、まさにその恥ずかしい時である。
「うるさいな。だって今、死に体状態の章には、ピッタリだろ! 大体、受験の時もそうだったけど、蓮様は意外に頭良いっていうのを忘れていたのが、そもそものお前の敗因だ」
敦がドラマかアニメの敵感滲ませて、勝ち誇っていると
「……お前、後でマジ殴る」
門脇が再び腕まくりをし始めた。
「え? 蓮様、どうして?」
敦としては褒めているつもりだったのだろう。ナチュラルな失言に気付いていない。
不本意ながら、唇に手を当ててフルフルと怯える敦は超絶可愛かったため、さすがの門脇も脅した罪悪感がほんのちょっぴりだけど芽生えた。
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