文化祭の余波 1

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(あの時は、全然知らない人ともいっぱい撮ったもんな)  美羽達にねだられて、体育館脇の空きスペースで写真を撮ったのだ。  その後、なぜか写真撮影会になった。  背景から察するに、その時のモノで間違いない。 (あの不特定多数の中に、この将之の部下が居たのか)  ノンフレームのスクエア眼鏡をかけたボブカットの女性。印象は薄いが、こうしてみるとクールな感じの知的な女性だ。文化祭には、やや不似合いなかっちりとした黒スーツを着ていた。  来賓として訪れた教育委員会の者と言われたら納得がいく。 「彼女が大事そうに見てたんです、その写真を」 「ほう、ほう」  朦朧とした頭で、将之の言う事に知己はいちいち大きく頷いてみせた。 「すっかりラノさんの虜になったそうです。『僕の知り合いだと思うから送ってほしい』って頼みこんで、やっと画像もらったんですよ」 (そうまでしてもらわなくてもいいのに)  と知己からしたら、思わないでもない。 「あ、ちなみに投票もしたそうですよ」  そういや「ラノさん」票が10票くらい有ったと章が言ってたな。  まさかそのうちの一票が、将之の部下のものだったとは……。 「実は、彼女、めちゃくちゃ仕事人間でして。女装ミスコンを生徒たちが楽しみに集まっていたんで、後学の為にと見に行ったそうです。が 『なんてお下劣! 低レベル! 最低! 見に行って損した!』  だったんで、校長に怒鳴り込んでやろうと思ってたんですって」  彼女の気持ちが分からないでもない。 (スカートめくってすね毛披露したり、半裸になってアニソン歌ったり、酷い乱痴気騒ぎだったもんな) 「それを踏みとどまらせたのは、ラノさんの気高さ、凛とした振舞。アピールタイムのダンスが美しくて、すっかりメロメロになったそうです」 (気高さ? そんなのあったかな?)  音楽聞いて条件反射のようにクロード達に仕込まれた動きを、何も考えずに踊っていただけなのだが。 「これぞ『文化祭!』だったそうで」  エントリーナンバー6番以降も、なかなかの阿鼻叫喚の地獄絵図だったと思うが。
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