文化祭の余波 2

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 放課後―――。  理科室に来た章達に「生徒立ち入り禁止」を言い渡すと、予想通りの猛反発を食らった。 「横暴教師! 『ちょっとなら理科室に来てもいい』って言ったくせに!」  まず、敦が先制口撃(こうげき)に出た。 (こいつ()、そんなに理科室に来たかったのか? そうは見えなかったが)  これまでの事を棚に上げての猛攻だ。 (大体、それを言ったのは章にだったと思うが、なぜ敦に言ったことになっているんだ……?)  多分、それを指摘すると敦は今の10倍の言い返してくるので、あえて言わない。 「今回ばかりはさすがに僕も敦ちゃんの味方するぞ!」 (今まで敵に回ってたんだ?)  これも面倒なので、言わない。 「平野先生、横暴! 敦ちゃんの言う通りー!」  章が味方に付くと分かると、ますます敦は横柄な態度に出た。 「俺達はボランティア精神で、大掃除や片付けをしているのに、来るなとは酷い。横暴だぞ、理不尽教師!」  この間から、「屁理屈教師」だの「横暴教師」だの「理不尽教師」だの、どんどん知己の肩書が増えていく。 (いや。テスト前で実験もしていないんだが……)  実験をしていないのであれば、片付けもない。むろん、夏休み以降大掃除もしていない。  敦達は、ただの時間つぶしで喋りに来ているだけなのだ。 「あのな、お前ら。普通、テスト一週間前くらいは早めに家に帰って勉強するもんだろ? お前らもそうしろって言ってる」  面倒な言い争いだけは避け、知己は本題だけを口にした。 「けっ! 生憎と誰かさんのおかげであんまり休まなく……いや、休めなくなったからな。改めて家で勉強しなくても分かるっつーの」  梅木敦。  ……来れば来たで、面倒になる男だ。
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