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「と、いうことで……俺達は理科室から撤退しない」
敦は相変わらず強引な着地にもっていった。
(どうあっても、こいつら、家に帰る気ないな……)
「要は赤点取らなきゃいいんだろ? 大体、章は元々学年1位の実力の持ち主なんだ。この間の白紙回答入れても、総合でかなりいい順位に行くはずだし。帰って勉強する必要ないだろ?」
「……」
それも大問題なのだ。
補講を受けたいがためにわざと低い点数取ったり、白紙回答出したり。しかも知己の受け持ち教科だけ。
これまで学年一位だった者が、順位を落とす……。
地味に担任としても理科担当教師としても、肩身が狭い。
テスト問題を作るために帰ってほしかったが、だんだん章と敦の成績も心配になってきた。
「お前らは全く勉強しようとしないし、俊也も勉強しているか心配だし……」
知己がため息を吐いた。
「あ。俺、いいこと思いついた!」
絶対に『いいこと』ではなさそうだが、一応知己は
「なんだ?」
と敦に聞いてみた。
「俺達が赤点一個もとらなかったら、悪徳教師、また女装しろ。だったら、家帰って勉強してやる」
「は?」
案の定、知己の嫌がる要求が飛び出した。
「なんで、そうなるんだ?」
すかさず知己はツッコんだ。
(突然……どういう意味だ?)
知己が訝しんでいると
「敦ちゃん……。そうか、分かったよ。敦ちゃんがそういうんなら、僕もそうする」
代わりに章が答えた。
「あのね、先生。俊ちゃん、自分が元々勉強できないくせに、『ラノさんが気になって勉強に集中できない』って言い訳して、今回、全く勉強ができてないらしんだ。
それで敦ちゃん、出現率が高いと思われてた理科室で俊ちゃんを捕まえて一緒に勉強しようとしてたんだけど、俊ちゃん、理科室にも来ないでしょ。
全く見えないだろうけど、敦ちゃん、これでも心配しているんだよ」
意味が分からない知己の為に懇切丁寧に説明する章だったが、言葉の端々に失言が見え隠れする。
「章! 余計なことを言うんじゃねえ!」
一見、章の失礼な言い回しを咎めているようにも聞こえたが
「俺は、見ていて気持ち悪いんだよ! 落ち込んでいる俊也なんて」
本人も意図せず、思わず本音が呟きになって零れた。
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