文化祭の余波 3

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「あ、おちょこ。カラになってますよ」  と言っては、また将之が酒を注ぐ。 (絶対に何かあるな……)  日頃、章達に鍛えられているおかげか、危険察知能力が上がっている。  しかし不審に思いつつも、将之が自分に対してベッド以外で酷い目に遭わせるとも思えない。それと仕事があがった解放感に、勧められるままに、飲んでしまって既に酔い始めていた。そして、アルコール度は昨日のワインよりも高い。  結果、昨日よりも速いペースで、知己はオクトパス化し始めた。 「一体、何を企んでいるん()?」  コトンと軽い音を立ててテーブルにおちょこを置く。 「企んでなんかいませんよ」  と言いつつ、知己の呂律が回らなくなっているのを見計らい将之が、「実はですね……」と語り始めた。 「昨日の写真をくれた部下がですね 『お知り合いでしたか?』 と聞くんです。それで 『知り合いだったよ』 と答えたら、どうしてもラノさんと会わせてほしいってことになりまして」  プライベートだし、知己の気持ちもある。将之が決める訳にはいかない。  何度も断ったが、彼女も食い下がった。  後藤にはくれなかった写真を送ってもらった手前、将之もむげに断ることもできなくて、今に至る。 「ラノさんに会う事、できないかなー……なーんて」 「なんらよー。お前もラノさんがいいのかよー」 「いや、僕じゃないですってば」 「ったく、お前は。俺というものがありながら『ラノさん、ラノさん』って……」 「あ、なんか可愛いこと言っている」 「なんか言ったかー?」 「はい。『おかわり要りますか?』って言いました」  息するように嘘を吐ける将之に 「要る―」  ニコニコと笑顔でおちょこを差し出した。
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