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知己が好んでしたのではないことは確実だ。
それは送ってくれた写真の微妙な表情を見ても分かる。
天地が逆さになってもそれはない。
「そもそも、なんでミスコンに参加したんです?」
酔っ払いレベルがかなり上がっている知己が、これまで言いたがらなかった学校事情を思いのほかつるっと、かつ、ゆるっと口をした。
「んー。ツッシーがな、特によく理由もなく学校を休むんらよ。らから俺がツッシーに勝ったら、ちゃんと学校来るって約束しやがるもんらから。……まあ、つまりは成り行きで」
こんなに簡単に動機を喋るのなら、警察はかつ丼ではなくお酒を用意すると仕事も楽になるのでは……と思われるレベルの口の割り様だった。
「結果は?」
「謎の優勝」
「何が謎なんですか? 当然の結果でしょ?」
「いや、マジで10倍近い票数で絶対に負けたと思ってたのら」
「10倍? なぜ、それで勝てるんです?」
「それは、ずっこいミスコン要項が発動されたかららららら」
「なんからが多いんですが」
「気にすんならら。おかわりーなのららら」
上機嫌で、おかわりねだる知己に「はいはい」と将之は立ち上がった。
「熱燗が空になっちゃったんで、今からちょっと作り直します。待っててくださいね」
と言い残してキッチンに向かう。
(正直、先輩の女装は見たい。だけど、クロードが絡んでいるなら話は別だ。できるなら、あいつとは関わらないでいてほしい)
理由は簡単。
将之はクロードが大嫌いである。
「先輩、さっきの話ですが」
カウンターの向こうから話しかけた。
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