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バンっと理科室の引き違い式スライドドアが荒々しく開けられた。
「まーた、邪魔者かよ。今度は誰……」
章が言い終わらぬうちに、突然、俊也が後ろに大きく反り返っていた。
「!?」
一瞬、何が起こったか分からなかった。
侵入者がありえないスピードで間合いを詰め、そのまま体重を乗せた正拳一発を放ち俊也を吹っ飛ばしていた。
殴られた衝撃で、俊也はゆっくりと後ろに倒れた。
「俊?!」
章が倒れた俊也を見ると、俊也は白目を剥き、ピクリとも動かない。
「……?」
何が起こったか今だ理解できず事態の急変に青ざめる章だったが、知己の傍に立つ侵入者の仕業だとは分かった。
その侵入者は、今度は章に狙いを定めた。
「先生に……そんなこと……」
侵入者が振り向きざまに言う。
「していいのは、俺だけだぁ!」
次の瞬間には、ぶんっと唸りを立てて振り向く反動を利用して回し蹴りが章の頭部めがけて飛んできた。
「……ひぃっ!」
恐怖でわずかに叫んで、章が反射的に頭を下げた。
ぱあんっ。
次に聞こえてきたのは、そんな肉を打つ乾いた音。
確実に俊也同様、一発で意識断ち切るはずだった蹴りは、
「お前もダメだろ!」
の一言と共に、知己が平手を繰り出したがために狙いがずれて空を切った。わずかに章の頭部を掠めるにとどまった。
「……っ……!」
掠めた蹴りの恐怖に包まれながら、章が顔をゆっくりと上げて、侵入者の顔を確認する。
「あ……?」
震える唇で
「か……門脇……、……蓮……様……?」
呟いた。
「蓮……様?」
知己の頭に大きなクエスチョンマークが浮かんだ。
知己の横で、はられた頬を押さえる男も理解に苦しんでいるように見える。
「蓮様……だぁー!」
なぜか嬉しそうに飛びつこうとした章だったが、今度こそ門脇に垂直にハエたたきの要領でシバかれて、理科室の床に突っ伏す結果になった。
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