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文化祭の余波 5
「あれ? ここは……」
あれから小一時間ほど眠り、俊也はスッキリと目が覚めた。
「保健室だ」
俊也のベッドの脇に折り畳み椅子を出して、いつもの白衣に着替えた知己が居た。
「……先生、ついててくれたのか」
ゆすっても大声出しても起きない俊也を、このまま寝かせようということになった。ただ理科室の床で寝かせるのは、さすがに忍びない。保健室の方がいいだろうと、三人で俊也を運んだ。
だが、敦が
(俊也の為に二人っきりにしてやろう)
と、居たがる章を無理やり連れだして出て行った。
倒れた俊也を一人にするわけにはいかず、知己が起きるまで付き添っている。
「あんな所でぶっ倒れやがって……」
敦と章の姿が見えないのは気になるが、とりあえず俊也は
「まさか、……ここで俺を割る気?」
と知己に訊いた。
「は?」
保健室のベッド。
シチュとしてはありえなくもない。
「だから、割らないっつーの!」
眉間に皺が2本入った知己が、すかさず突っ込んだ。
「あれは、ちょっと言い間違えただけ」
「俺、割られ方をよくは分からないんだけど。先生が分かってたら、なんとかなるよな」
「話を聞け。俺は、お前を割る気は全くない」
「やっぱ、女と同じで初めは痛いのかな?」
「本当に聞いてくれ。割・ら・な・い!」
「………………………………………冗談だよ」
しかし、今の間はなんだったのだろうか。
「その手のジョークは嫌いだ」
と言いながら、知己は折り畳み椅子をたたんだ。
俊也が目覚めたので、理科室に帰る気なのだろう。
「行くな」
「は?」
知己は振り返った。
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