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「何が『行くな』だよ。お前も元気になったんだろ? 俺と一緒に出るんだ」
「元気にはなったけど……」
(もう少しここに居たい。できるなら先生と二人っきりで居たい……って、いや、なんだ、俺。なんかおかしいぞ)
俊也は戸惑った。
(なんだ? なんだ、なんだ? 先生を見ていると妙にソワソワするこの変な気持ちは……)
「実はな、保健室の先生ももう帰った後だったんだ。俺がカギを借りてきて、今、特別に使わせてもらっている状態。
俊也が元気になったのなら、出なくっちゃ」
この日は2学期最後の終業式の日。しかもクリスマスイブ。学校は午前中だけで、生徒も職員も午後まで残っているものは少ない。そのわずかに残っている者も終業のチャイムを荷物まとめて今か今かと待っているような状態だ。
俊也は、ベッドに上半身起こした状態でちっとも動こうとしない。
「割られるってのは冗談で、本当は……俺が割りたい」
「……」
何を言い出すのか、こいつは……と知己は思った。
(これが章の言ってた生々しいDKの淫夢の話か)
「もういいって」
知己の眉間の皺が三本に増えた。
「蓮様と全面対決になってもいい」
「……はあああああ? 何故そこで門脇が出てくる!?」
(こいつ、何なんだ……!)
知己はイラリとして、こめかみに血管まで浮いた。
「お前、いい加減なことを言うな。ほら、帰るぞ」
「イヤだ」
俊也はかけ布団を握りしめ、断固として動かない姿勢を示した。
「何が嫌なんだ。帰るぞってば」
特別に借りた手前、保健室の戸締りをせねばならない。
使命感に駆られて俊也の腕を掴んで引っ張り起こそうとした。
が、逆に知己は俊也に腕を掴まれて、そのまま奥に引かれた。
バランスを崩した知己は、そのままどっと俊也の膝の上に倒れ込んだ。
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