文化祭の余波 5

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「何、ちょっといい雰囲気になってんの?! 言っとくけど、僕だって先生のこと大好きなんだからね!」  章が勢いに任せて言うと、知己は(ホラ、ね)と三人の悪戯だとますます確信を強めていた。 「ぎゃー!」  突然、敦が悲鳴を上げた。 「それだけは許さーん!」  と言うと、章と知己の間を背後から裂くように体をねじ込む。 「一体、何なんだ?」  と知己が訊くと 「モテているとかキショイ勘違いすんなよ、ハニトラ教師!」  鼻息荒く怒り飛ばす。 (また変な名前つけられた……)  知己がうんざりしていると 「勘違いじゃないよ、敦ちゃん!」  章が畳みかける。 「いーや、勘違いだ。俊也も章も、このハニトラ教師に惑わされているだけだ! 目を覚ませ!」 「いや、少なくとも俺は勘違いじゃねーぞ」  なぜか勝ち誇る俊也は、依然としてベッドの上だ。 「だって俺は先生とやっちゃう17才だけどアール18な夢を、いーっぱい見たからな」 「うぎゃー!」 「それこそやっぱり勘違いじゃん! その夢の相手はラノさんだろ? 俊ちゃんが好きなのはラノさんで、先生じゃないよ」  二人が激しい言い争いになっていると、敦が 「まじでキショイ、キショイ! 正気か、お前ら。たちの悪い冗談はやめろー!」  と耳を押さえながら叫んだ。 (……まったくもってその通りだ)  知己は珍しく敦に全面的に賛成した。  とうとう時刻は17時を回り、終業のチャイムが鳴った。  世間はクリスマス・イブ。  街にイルミネーションが灯り、楽しいひと時を過ごしているのだろう。 (ああ、俺ももう帰りてー……)  きっと校舎に残っているのは、知己と言い争う3人の生徒だけ。 (将之……、ごめんな。今日もまだ帰れそうにない)  知己は窓の外をぼんやりと眺めた。  窓の外はすっかり暗くなり、ほんの少しの雪がチラチラと舞い始めていた。           ―文化祭の余波・了― 【挿絵を上げてみました。】こちらでお年始の挨拶を敦がしています。よろしかったら覗いて行ってくださいヽ(^。^)ノ https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=470
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