242人が本棚に入れています
本棚に追加
そう考え、
「確か、この辺にカップ麺があったよな?」
知己は乾物をストックしている戸棚を開けた。
「あった、あった」
見つけたカップ麺に、ケトルでカンカンに沸かしたお湯を注ぐ。湯を沸かすのは将之も例外で許可を出していた。理由は簡単。お湯は炭にならないからだ。
5分の4ほど開けたカップ麺の蓋を、改めてもう一度閉じ、ケトルの底を押し当てた。するとケトルの熱でカップの蓋が開封前に戻されたようにくっつく。これも理科教師ならではの技をくり出した後、知己は3分のオイルタイマーをひっくり返した。
「ふふふ……こういうの、久しぶりだなぁ」
ワクワクして待っていたら、ソファに置いていた知己の携帯電話が不意に鳴った。
「ん? 誰だろ? 将之かな?」
急いで取りに行き、表示を見るが知らない番号である。
当然、出ない。
しばらくすると、またかかってきた。
同じ番号が表示されている。
「気味悪いな……」
さっきと同じようにスルーを決め込んだが、こうも何回もかかってくると気にはなる。
(もしかしたら、実家の誰か……かな?)
父も母も高齢にさしかかっている。機械には疎い。もしかしたら、携帯を変えたその知らせかもしれない。
あるいは、家族のピンチで知らない誰かが親切に電話をかけてくれたのかもしれない。
「……」
だんだん、不安になってきた。
だけど、かけ直す気にはなれない。
(よし。次に鳴ったら、思い切って出てみよう)
そう思っていた時だった。
三度目の正直。
またもや電話がかかった。
なんだかとても嫌な予感がして、
「はい。もしもし……」
念の為、名前は名乗らずに電話に出てみた。
「あ、やっと出た!」
聞き覚えのある声。
(……誰だ?)
記憶をたどるが、すぐには思い当たらない。知己の頭は正月モードで、かなりぽややんな状態だった。
「先生、先生、暇でしょ? 初詣行かない?」
最初のコメントを投稿しよう!