初詣 1

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(……なんて脅しだよ)  電話口の向こうで、敦が「何の話だ?」と章に話しかけた。よく聞くと、俊也の「おい、先生はなんて?」という声も聞こえる。  おそらく三人一緒に居るところで電話をかけているのだろう。 「ちょっと待て」 (敦は俺を嫌っているから、章が俺のケーバン知らない方が都合いいだろ? 章に協力するとは思えないが……)  なかなかはっきり返答しない知己に 「敦ちゃーん!」  更に追い詰めるべく、章が敦を呼んだ。 「ねえねえ、僕と初めての共同作業をしない?」 (しょっちゅう、つるんでいるくせに!)  という知己の心のツッコミは、現実には声を出していないから聞こえない。  あからさま過ぎるハニートラップなのに、敦は「する」と即答していた。 「分かった! ケーバンは変えない! だから、さっさと用件を言え!」  あえなく知己は陥落した。 「初詣行かない?」 「行かない」  と答えると、すかさず章が「敦ちゃーん!」と呼びつけ、敦は「何だ?」と答えていた。 「分かった!」 (これは正月早々面倒になる)  と判断した知己が、慌てた。 「付き合うの一回だけだぞ」 「やったー! 先生、ありがと。今、ちょうど敦ちゃんも俊ちゃんもうちに集まってて」 (それは声で分かった) 「せっかくのお正月だから、それらしいことをしたいねって話してたんだ」 (だったら、俺抜きでやってくれ) 「今年は僕ら受験生になるからね。だったらお参りしておこうってなったんだ」  よほど嬉しかったのだろう。  知己が口を挟む間もなく立て続けに章が喋る。
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