初詣 1

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「ねえ、ねえ。先生、どこの神社行きたい?」 「どこでもいい」 「じゃあ、移動するの面倒そうだから先生んちの近くの神社にしようか?」  ぐいぐいと恩着せがましく、話を進めた。 「……住んでる所なら教えないぞ」 「どこでもいいって言ったくせに」 「この流れで教えると思うか?」 「ちっ。先生、思ったよりも頭いいんだねー」  とても生徒が教師に言う言葉ではないが、普段、章達が教師に対して思っていることが前面に出ている。 「じゃあ、うちの近くの神社にしよう。先生、担任なんだからうちの住所分かるよね?」 (それは……、残念ながら分かる)  個人情報管理が厳しい中、長期休暇中は不測の事態に応じられるように特別に持ち出しOKとされていた。  だが校長も、こんな不測の初詣事態が起こるとは思ってもみなかっただろう。 「ねえねえ。お昼はどうする? 僕たちまだだから一緒に食べたいんだけど」 「あ……」  思わず知己はキッチンのカウンターを見た。オイルタイマーは、完全に落ち切っている。 「俺は……食ってから行く」  知己は遥か前に作ったカップ麺の事を思い出した。 「そう。じゃあ、僕らもご飯食べてからにするね。まーたねー!」  章はご機嫌に電話を切った。   「う。なんて極太麺になったんだ……」  まさかのカップ麺での失敗に、知己は泣きそうな気持ちになった。  まだ温かいことだけが、唯一の救いだった。
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