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三十路、三十路ともてはやされ(?)ながらも、やっとお参りの順が回ってきた。
受験を意識してか、真剣に手を合わせる三人。
それに習い、知己も手を合わせた。
(そういや、あいつは初詣なんて行きそうになかったな。せっかくだから、あいつの分まで祈っておこう)
全く行く気なさそうな同居人の分まで、今年一年の健康と無事を祈った。
四人で参拝終わった後、次の人に順を譲りながら
「俺は初めてここにお参りしたんだけど、この神社の御利益は……?」
知己が訊くと
「えーっとね、確か、恋愛の神様だよ」
「はあ?」
しれっと章が答えた。
(……道理で、女性参拝客が目立つ訳だ)
「学業成就じゃないのか?」
(受験生だから、お参りしたいって言ってたよな?)
知己がビックリしていると
「まあまあ、神様も時代に合わせてマルチ化していると思うから大丈夫」
章が答えた。
「いや、神様は神様だろ? 時代や人に合わせないよな?」
戸惑う知己に
「もおー! 『どこでもいい』って言ったくせに」
章が苦々しく言う。
これには、さすがの敦と俊也も驚いている。どうやら二人も、知らなかったようだ。
(だったら、卿子さんのことお願いしたら良かった……)
マルチ化しているかどうかは分からないが、恋愛の神様に健康と無事を祈ってしまったのは、お門違いで何やら申し訳なくさえ思う。
「そういや縁結びの神様って、さ、縁切りの神様でもあるって」
ぼそりと章が言う。
「え?」
「人の縁って結ぶ数に限りがあるんだって。だから、悪縁を切って、改めて良縁を結ぶんだって」
「「早く言えよ、章。だったら、お参りの内容をもっとちゃんと考えたのに」」
恐ろしいシンクロ率を発揮してしまった俊也と敦に
「うわ! そこまで声を揃えて言う? めちゃくちゃ俊ちゃん達、気持ち悪いんだけど」
章が引いていた。
「ねえ、ねえ! このまま帰るのも、もったいないよね」
神社を出ると章は知己の手を取り、モールの方にグイグイ引っ張った。
「四人でお茶して、帰ろうよ。そこのお店でコーヒーでも飲もう」
【ちょっと付け足しです】
神社マルチ化:神社によりけりみたいですが、特化しているところもあったりなかったりみたいです。
縁結びと縁切り:諸説ありみたいな。そういう所があったりなかったり。
ゆるく読んでもらえると有り難いです😀💕
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