初詣 2

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 三十路、三十路ともてはやされ(?)ながらも、やっとお参りの順が回ってきた。  受験を意識してか、真剣に手を合わせる三人。  それに習い、知己も手を合わせた。 (そういや、あいつは初詣なんて行きそうになかったな。せっかくだから、あいつの分まで祈っておこう)  全く行く気なさそうな同居人の分まで、今年一年の健康と無事を祈った。  四人で参拝終わった後、次の人に順を譲りながら 「俺は初めてここにお参りしたんだけど、この神社の御利益は……?」  知己が訊くと 「えーっとね、確か、恋愛の神様だよ」 「はあ?」  しれっと章が答えた。 (……道理で、女性参拝客が目立つ訳だ) 「学業成就じゃないのか?」 (受験生だから、お参りしたいって言ってたよな?)  知己がビックリしていると 「まあまあ、神様も時代に合わせてマルチ化していると思うから大丈夫」  章が答えた。 「いや、神様は神様だろ? 時代や人に合わせないよな?」  戸惑う知己に 「もおー! 『どこでもいい』って言ったくせに」  章が苦々しく言う。  これには、さすがの敦と俊也も驚いている。どうやら二人も、知らなかったようだ。 (だったら、卿子さんのことお願いしたら良かった……)  マルチ化しているかどうかは分からないが、恋愛の神様に健康と無事を祈ってしまったのは、お門違いで何やら申し訳なくさえ思う。 「そういや縁結びの神様って、さ、縁切りの神様でもあるって」  ぼそりと章が言う。 「え?」 「人の縁って結ぶ数に限りがあるんだって。だから、悪縁を切って、改めて良縁を結ぶんだって」 「「早く言えよ、章。だったら、お参りの内容をもっとちゃんと考えたのに」」  恐ろしいシンクロ率を発揮してしまった俊也と敦に 「うわ! そこまで声を揃えて言う? めちゃくちゃ俊ちゃん達、気持ち悪いんだけど」  章が引いていた。 「ねえ、ねえ! このまま帰るのも、もったいないよね」  神社を出ると章は知己の手を取り、モールの方にグイグイ引っ張った。 「四人でお茶して、帰ろうよ。そこのお店でコーヒーでも飲もう」 【ちょっと付け足しです】 神社マルチ化:神社によりけりみたいですが、特化しているところもあったりなかったりみたいです。 縁結びと縁切り:諸説ありみたいな。そういう所があったりなかったり。 ゆるく読んでもらえると有り難いです😀💕
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