初詣 2

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「頼むから、やめろ。生徒に奢られたら、俺の立場ないだろ?」  と言うか (ここで騒ぐな! 俺は一刻も早く移動したい!)  店の前から踵を返すが、敦は動きたがらない。 (それにしても誰だろう?)  将之のむかいに座るのは、ボブカットにスクエア眼鏡の女性。お互いに携帯を見せ合って、何やら談笑している。 (そういや、あいつ。外面良かったっけ……)  フェミニストで好青年ヅラして、卿子をはじめとする女性に受けが良いのは、知己も知っていた。  チラリと隣を見ると 「何だよ? 俺は(ここ)のカフェ・ラ・テが飲みたいんだ。しかもグランデで! 自販機のじゃなく」  と敦が睨み返してくる。 (大きく括ったら、こいつと同じ感じだな)  敦は恐ろしいほどの分厚いレンズの眼鏡をかけている。それを外せば、たちまち超絶美少女になり、もはや変身の域だ。 (眼鏡外したら、めちゃ美人系の……)  将之のむかいの女性にそれを感じとって、もやっとした感情が腹の奥底から湧き立つ。  しかも、眼鏡の清楚美人はタイトスカートの黒い定番スーツで、いかにも仕事できそうな雰囲気を醸し出している。 (あいつ……。仕事始めと言いながら、本当はデートかよ?) 「じゃあ、先生が奢ってくれるの?」  章が訊くと 「う……、やむを得んな」  知己が渋々答えた。  するとまったく動きたがらない敦と違い、章は知己に従ってクルンと店の方に背を向けた。 (え……?)  絶対になんやかんや言って動かないと思っていただけに、知己が驚く。 「先生が買ってくれるのなら、僕はご当地キーホルダーのキテ〇ちゃんやキュー〇ーさんでも嬉しいな!  奢ってもらったペットボトルは、大事に持って帰って飾るね」  買ってもらう前から、大はしゃぎの章に 「いや、すぐに捨ててくれ」  知己は、若干引き気味に返事をした。
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