初詣 2

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「章、蔑んだ言い方するな。キ〇ィもキ〇ーピーもめっちゃ可愛いじゃねえか」  相変わらずの俊也は可愛いもの好きのようだ。 「それとも何か? 章は、ご当地グッズに恨みでもあるのか?」  俊也が訊くと 「敦ちゃんが、旅行行く度にお土産にくれるんだ。なんかもう呪われそうなくらい家の押し入れにあるよ」 「敦のお土産は、押し入れの中なのか? ……可哀そうに」  決して敦にではない。多分、キテ○や○ューピーへの憐みの気持ちだろう。俊也が哀しそうに呟いた。 「それ、小学生の頃の話だろ? そういうの暴露するのやめろよな!  そもそも章が『お土産は、そこにしかないものがいい』って言うから、悩んだ末にご当地キーホルダーシリーズにしたんじゃないか」 「意外だ。梅木家は国内旅行派なんだな」  俊也が言うと、 「違うよ、俊ちゃん。ご当地キ○ィは、海外にもあるんだよ」 「マジか」 「コンプリート間近だろ? 感謝しろ!」  お土産のセンスを問われ、敦もムキになって言う。 「ああ、もう! 店の前で騒ぐなって。気付かれるだろ?」 「気付かれる? 誰に?」  敦に言われ、慌てて知己は 「あ、いや……何でもない」  とお茶を濁した。 「まあ、いいや! じゃあ先生、あっちの自販機でキャラメルマキアート奢ってね!」 「それ、絶対に自販機に売ってないと思う」  指摘する俊也だが、彼の希望の長い名前のものも、自販機では売ってなさそうだ。 「俺も先生が奢ってくれるんなら、自販機でいいや」  と、アッサリ寝返った。 「え? ……そ、それじゃ、二人がそれでいいって言うんなら、俺も……」  最終的には敦もなびいてきた。 (なんだかな……。こいつらの引率って……疲れる)  去年も門脇達に付き合って、オープンキャンパスなど引率に付き合わされたが、その時とずいぶん違う印象を受ける。  やっと話がまとまったので、神社脇の自販機前のベンチで4人は休憩し、解散した。
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