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「答えられない……ということは……!」
勝手に悲壮感増している将之に
「待て、待て、待て! お前、絶対になんか勘違いしている!」
慌てて知己は制した。
「していません」
(なぜ、こうも自信満々に言い切れるんだ?!)
苛立ちを滲ませて知己が将之を睨むと
「ふうん。先輩から言う気はない……と」
どこまでも悪意で将之は解釈していた。
「いいでしょう。そんなに先輩が言いたくないのなら、僕が代わりに言ってあげましょうか」
(何なんだ、こいつ?)
探偵ものの本か何に影響されているのだろうか……と知己は自分の置かれている状況を忘れて、将之を見つめた。
「まず、お昼ご飯です。カップラーメンを食べた……ということは、先輩は昼に急いで出かけなくてはいけない用事ができた。もしくは出かける直前まで、休みだからって惰眠をむさぼっていたってことですね」
人差し指をびしっと立てて将之が言う。
「全部、違う」
冷静に否定すると
「え。全部?」
驚く将之が、困ったように指を引っ込めた。
「うん、1mmも掠ってない」
「えー……っと、まあいいか」
(いいのか?)
「続きです」
咳ばらいを一つして、将之は続けた。
「昼食を取った後、先輩は新しい学校での門脇君的な存在を初詣に誘った……これはどうですか?」
「門脇的な存在?」
「門脇君的存在……つまり、異常なまでに先輩をマンセーしているイケメン君。しかも3名」
「……」
「黙るということは当たっていますね」
「いや、俺から誘ったというのは違うけど」
「じゃあ、半分当たりか」
(なんだ、これ。めんどくさいな……)
ほぼ当てずっぽうな将之の推理に付き合うのが面倒になってきた。
だが
(ん? 3人?)
急に具体的な数字が出てきて、知己は訝しんだ。
(もしかして、こいつ……!)
「初詣に行った神社は、恋愛成就で有名な神社……ですよね?」
「それは当たり」
「やはり。すべての謎が解けた。真実は、ひとつ」
将之が満足そうに色々な決めセリフを言った。
ただこの段階で当たっていたのは、初詣の神社の得意分野と行った人数だけだが。
「……っていうか、将之。お前……」
「もちろん、気付いていたに決まっているでしょ? あんなに騒いだら、誰だって分かりますよ」
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