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「門脇……? ……お前、何してたんだ?」
通りすがりに問答無用の無差別暴力。
褒めるところは、なに一つもなかった。
「いちいち覚えてねえ。あの頃、俺はやさぐれていた」
「は?」
やさぐれていたからといって、していいことと悪いことがある。
「あー、確か先生に理科室出入り禁止の頃かな? やることなくって、手当たり次第にケンカふっかけてぶっ飛ばして、先生に会えないストレス発散してた頃だ」
ストレス発散。
「そんな理不尽な理由だったんですね。僕ら、突如現れた蓮様になすすべなくぶっ倒されました。それから僕らは蓮様をリスペクトし、いつかまた会えないかと期待して、日々腕を磨いて過ごしてきたんです」
(腕?)
磨いたのは腕力の方ではなく、恐喝の方の腕だったと思われた。
「だけど、それ以来蓮様に会うことがなくって……」
悲しそうにする章に
「俺が徘徊してたの、先生にフラれた直後だけだったからなぁ」
と衝撃の一言を放った。
「あ……あー……」
知己がどう返事しようか困っていると
「フラれ……?」
章が難解な言語を聞いたような顔をした。
そうしているうちに、俊也が目覚めた。
これまでの成り行きを気絶していたので知らない俊也は、章と同じように門脇を
「門脇蓮?! あの伝説のケンカ番長!!」
とうっかり怨嗟交じりに呼んでしまい、今度はノーモーションデコピンを食らった。眉間を強打された痕だからひたすら痛い上に眩暈まで起こしている中、章と共に理科室のフローリングの床に、有も無も言うことを許されずに正座させられた。
「とにかくお前ら、俺の先生に手ぇ出すな」
(俺の?)
章たちが疑問に思うよりも早く
ぱあんっ
と乾いた音を響かせ、またもや門脇が張られていた。
「ひでえ。暴力反対」
正座した俊也が上目遣いに知己を非難する。
「大丈夫だ、門脇はもはや生徒ではないからな。後、手加減もしている」
(そういう問題?)
章たちが首を捻るような答えしか返ってこなかった。
「そう。俺、もう生徒じゃない。だから、先生の恋人として名乗りを上げても……」
「恋人ぉ?!」
章と俊也が驚きの声を上げるのと同時に
ぱ、ぱあん!
門脇は、二連発張られていた。
「一個人としてもどうかと思うが」
と俊也が正論を言ったが、
「先生! 質問!」
手を上げる章の声にかき消された。
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