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「僕は絶対にショートヘアのラノさん推しですが、彼女はロングのラノさんが最推しなんだそうです」
「あ! それで携帯写真を見せあいこしてたのか!」
やっとあの日の光景と結びついた。
(どう見てもいちゃついているとしか見えなかったが。俺の髪型の話題で盛り上がっていたとか……)
自分の知らない所で話題にされていたと思うと、何やら知己の背筋に寒気が走る。
「なんか、……………気持ち悪」
が、相変わらず将之はそんなことなど聞いていない。
「以前、先輩は門脇君プロデュースでゴスロリの格好もしてましたよね?」
「は?」
「それでですね。ラノラーの僕としては、そろそろ新しいバージョンも見たいなとか写真が欲しいなとか思っているのですが」
(俺は着せ替え人形か? 何をこいつはまた新しい扉を開いているんだ?)
知己の疑問は尽きない。
「……絶対にしないぞ」
「彼女に自慢したいんですよ」
「彼女?! ……あ、いてて」
大きな声を出すと腰に響くというのに、うっかり忘れてまた声を荒げてしまった。
「いや、あの後輩の子に自慢したいって話ですよ。
先輩、ちょっと過敏になり過ぎてませんか?」
すべての真実を捻じ曲げて悪意に解釈し、妄想推理大誤爆した将之にだけは言われたくない。
と思いつつ、知己は、初出勤すべく鈍く痛む腰を庇いつつもヨロヨロと立ち上がるのだった。
―初詣・了―
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