吹山章の独白

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吹山章の独白

 こんにちは。突然ですが、吹山章です。  今日は……っていうか今日も、理科室に来ています。  僕たちが特別教室棟の非常階段や屋上でたむろするのはよくないと、理科室OKにしてくれた平野先生ですが、相変わらず仏頂面でひたすら僕達を無視して教科書読んでいます。  でも、僕らの話に聞き耳立てているのは反応で分かります。時々、我慢できずにツッコむこともしてきます。だから、素直に僕らの中に入って会話を楽しめばいいのにと思うのですが、とりま、幼馴染の敦ちゃんこと梅木敦は全力で嫌がっています。女装したら可愛い子ちゃん同士、仲良くすればいいのに……と思います。  俊ちゃんこと須々木俊也は、今、試験勉強の真っ最中です。  実は先日、すごい会話をしました。 「なあ、お前ら知ってたか?」  この話の始め方から、もうダメだと思われます。  僕らが超能力者でもない限り、こんな マメシ○のように話しかけられても、なんとも答えることなんてできませんよね。  正直、僕は無視しちゃおうかな……なんて思ってたんですが、なんだかんだで友達思いの敦ちゃんは、 「何を?」  って、ちゃんと聞いてあげてました。すると 「3学期って、期末テストしかない……」  やったらと暗い顔で俊ちゃんが言いました。  驚きです。  僕は(今、それ?)と思いました。 「今更だな。中学校の時から、そうだったじゃないか」  と敦ちゃんが言うと 「忘れてた」  と言いました。 「俊ちゃん、確か今、高2だよね。去年もそうだったでしょ?」  と僕が言うと 「忘れてたってば」  なんとかの一つ覚えのように、何のひねりもない返事です。 「どんだけトリアタマなんだよ」  敦ちゃんが言い 「だから、成績悪いんだね」  と僕も溜息と共に言いました。 「とにかく! それで俺は今、非常に困っている」  俊ちゃんが弄られるのに耐えかねて叫んでいますが、まあ言いたいことは明白でした。 「俊也は赤点必至か?」  人のいい敦ちゃんは、俊ちゃんにわざわざ確認しました。  僕には、もうこの辺りからオチは見えていました。
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