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その時、僕に天啓が降りてきた。
『ごきげんよう、章君』
ん?
今時「ごきげんよう」なんて、お嬢様学校でもライオンでも聞かないぞ。天啓っていうのは、ずいぶん丁寧な喋り方をするんだな。
『今回の任務だが……いや、今回も前回と全く同じ任務だが、さっぱり勉強ができていない須々木俊也の赤点を回避せよ』
んんんんんんんんんんんんんん?
2学期末に1位返り咲いた僕は、余裕ぶっこいて、ちょっと映画観すぎちゃったのかも。CGもスタントも使ってないという映画を、シリーズで一気観しちゃった所為かな。
なんかそれっぽい幻聴が、先生の声音で聞こえてきました。
『なお、この件に関して、章あるいは敦が俊也同様赤点を取っても、俺は一切感知しないものとする』
……無責任だな、先生。
とはいえ、これは勝手な僕の解釈だ。
教卓から必死の形相で訴えるかのような先生の目。
それが僕にこんなミッションを密かに送っていると受け取ったんです。
もしかしたら、違ったのかもしれない。
でもそんなことは知ったことではない。
何故なら、僕らの会話に視線だけ送って、ちゃんと参加しない先生が悪いんだから。
『場所は貸してやろう。ここで好きなだけ勉強すればいい』
恩着せがましく言ってるけど、誰が勉強教えると思ってんの。
言っとくけど、俊ちゃんに勉強教えるのって至難の業なんだからね。
僕は、そっと人差し指を立てた。
『 報酬は、……先生を1日自由にしていい券。……だったらこのインポッシブルなミッションに挑んでみるよ』
と目で要求すると、先生は神妙な顔して、それでも黙って頷いていました。
アッシェンテ!(承知しました!)
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