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「先生は、蓮様の恋人だったんですか?!」
「違う!」
即答だった。
「ですよねー」
章がほっとしたような顔で隣にいる俊也に同意を求めるが、俊也は滝のような汗をかくだけでリアクションに困っていた。
「あ、実はですね」
章の語りは止まらない。きっと、憧れの門脇蓮に二年越しに会えたのが嬉しくてたまらないのだろう。
「まだ、何かあるのか?」
知己は、正直うんざりしていた。章と門脇の出会いが出会いなら、再会も再会なのだから。
「僕は、てーっきり蓮様がケンカばっかしてたんで、絶対頭悪いだろ……と踏んでたんです。それで八旗高校を受験したんですけど、居ないと分かって、超ショックでしたー」
どれだけ自分は門脇をリスペクトしているか、アピール。
「え? 章……。お前がここに居る本当の理由って、それだったのか」
「うん!」
多分、時と場所と場合さえ違っていれば天使に見える微笑みで、章は大きく頷いた。
「八旗高校と東陽高校の制服、ほとんど一緒で見分けつかないじゃないですか。だから、絶対に進学率すげえ東陽は『ない』と思って。当時、すぐに願書ださなきゃいけない時期だったので、調べる余裕もなくって一か八かの賭けに出たんですが、やー、失敗しちゃったなぁって少し思ってたんですよ。でも、こうして会えたんなら結果オーライ!」
(軽いな!)
知己は思った。
章はニコニコと笑顔で携帯を取り出し、今度こそカメラを起動させた。
(でも、この発言って……リスペクトアピールじゃなく、天然に門脇を。ついでに全八旗高校生を馬鹿にしているんじゃ……?)
「やー、嬉しいな! まさかここで蓮様に会えるとは」
正座から立ち上がったものの、痺れる足ではよろよろと生まれたての子牛状態。
だが、そんな事さえどうだっていい。
子牛の章は、ニコニコ、よろよろと嬉しそうに門脇に近付く。
「ちょ、一緒に写真撮らせてください。友達に自慢しちゃおー!」
とカメラを向けるも、門脇が容赦なくチョッピングライトを叩き込んでいた。
ー了ー
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