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「ここは私に任せて、知己は事務室へどうぞ」
という英担に
「ちょどいいや。社会の後で英語もみてもらおう」
ふっかけたけど
「All right!」
気軽にOKしやがったんです。やっぱり、この英担、むかつきます。
「あー、じゃあ、とりあえず行ってくる……」
ケソケソして出て行く先生を後目に、僕らは勉強を続けました。
「じゃあ、さっきの続きだよ! オーストラリアの首都は?」
「シドニー!」
と俊ちゃん。
「メルボルン!」
と敦ちゃん。
「違う! キャンベルだよ!」
僕が正解を告げると
「「うぇぇぇー」」
と悲し気に叫びました。
その横で、英担が(思ったよりもやばくない?)みたいな顔になっていました。英担は気軽にこの場を引き受けたようだけど、(先生はこの嫌な空気をずっと吸っていたんだからな。思い知るがいいーっ)と僕は思いました。
「次、カナダの首都は?」
「Oh! 私の生まれ故郷です。I came from Canada.」
そんな情報と中学レベルの英語、要らないよ。
英担無視して俊ちゃん達に答えるように、じろりと再び睨んだら
「ええっと、バンクーバー?」
すっかり自信なさそうに敦ちゃん。
「トロント!」
依然、なぜか自信満々に答える俊ちゃん。
英担に至っては、生まれ故郷の首都を答えてもらえず、二人のダメっぷりに「Noooooooooooooooo!」
打ちひしがれて、大袈裟に教卓に顔を伏せました。
「違う!」
当然、僕は苛立ちMAX。すると、これまでの不正解の連発に俊ちゃんが真っ暗な顔になり
「……俺、もう……オワタ」
と泣きそうになって呟きました。
「正解! 須々木君、やればデキル!」
突然、教卓の英担が顔を上げて、俊ちゃんを褒めました。
「え? え? そうかな? 俺、デキル子?」
単純な俊ちゃんはそれで調子づいたみたいです。
僕は、俊ちゃんにほんのり灯ったやる気の光を消さぬよう
「そう、正解だよ。カナダの首都はオタワ」
こっそりと正解を教えました。
(答案に「オワタ」と書かれても困るしね)
大体、こんなもんです。何でもいいんです。暗記問題なんて適当に印象付けときゃ、さすがの俊ちゃんでも覚えるでしょ?
結果オーライということで
「俊ちゃんはやればできる子だから、やろう。ガンバロウ。そして、みんなで一緒に3年生になろう」
と励ましながら、勉強会を続け、期末考査を迎えたのでした。
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