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知己を自由にしていい一日 1
「皆さん、お待ちかねの結果発表でーす!」
なぜか俊也の答案を章がトランプカードの如く扇状に持ち、明るいノリで言う。文化祭以来MCが板についたというか、もともと持っている仕切り屋の本領発揮である。
理科室には、知己といつものDK3人、そしてなぜかクロードも参加していた。乗り掛かった舟……というよりも否応なく章に「英語を教えろ」と抱き込まれたのだが、関わった以上、結果が知りたいのだろう。
(あの章の顔を見れば、結果は見えたも同じだな)
章は、やはりトランプのカードを切るみたいに一枚一枚読み上げながら机に広げていった。そこに俊也のプライバシーも何もない。
「30点、30点、30点、32点、30点……」
30点満点じゃないというのは、1つだけ入った32点で分かる。
(悲惨だなぁ……)
数学に至っては、部分点をかき集めての30点だった。敦の「分からなくても何か書け! 書いたら点数もらえるかもしれない。だが、書かなければ確実に0点だ」の指導が生きている。ついでにいうと、夏休みの強制補講受けたさに白紙を出した章のイケナイお手本もあったので、俊也にも分かりやすかったのだろう。
「さすがだね、俊ちゃん」
「どこが『さすが』?」
思わず知己が突っ込むと
「安定のデルタ翼。ハリアー並みの低空飛行を期末考査でも見事に実現」
「その表現、分かりにくいからやめろって」
たまらず敦が突っ込んだ。
「素晴らしいじゃないですか、須々木君!」
今度はクロードが賞賛すると
「何が『素晴らしい』?」
ここまで紙一重のぎりぎり回避は、ある意味『素晴らしい』才能なのかもしれないが、とりあえず知己は突っ込んだ。
「1教科だけ32点がある。頑張った! 頑張った!」
「え? そこ?」
そんな所が果たして「素晴らしい」に値するのか、知己には理解しかねる。
よく言えば、クロードは褒めて伸ばすことに力を注いでいる。悪く言えば、俊也を適当に扱っているとも取れた。所詮、クロードの担当の生徒ではない。言ってみれば、どうでもいいのだ。
(担任は、俺なんだぞ)
いい加減に褒めやがって……と思うが、まあ、3学期のテストを無事に終えれば文句もない。
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