242人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちなみに教科は?」
と敦が聞くと
「理科だね」
章が答える。
「愛のなせる業かなぁ?」
揶揄うように章が言うと
「……そ、そうかも……」
俊也は照れ笑いを浮かべた。だが知己は
「あれだけ懇切丁寧に教えたのに、他の教科との違いはわずかに2点かよ……!」
努力の割に合わない点数の差に、門脇ばりに俊也を張り倒したくなっていた。
「と、いうことで……俊ちゃん、よく頑張りました! 進級おめでとうー!」
章が唱えると、その場の全員が「とりま、めでたい」というやっつけ感しかない拍手を俊也に送った。そんな拍手でも俊也は、まんざらでもなさそうだ。
「おめでとう、須々木君。次回は、英語でももう少し点数取ってくださいね」
「おう、先生! がんばってみるよ!」
「3年生では、普段から勉強しろよ」
「敦、世話になったなぁ! ありがとよ!」
「私は『暖簾に腕押し』の諺の意味が分かった気がしましたよ」
「とことん『馬の耳に念仏』でもあった勉強会だっな。……とにかく、もうあんな胃の痛くなるような事態は嫌だからな」
「分かっているよー!」
クロードと敦が次々と俊也に労いの声をかける中、章がそっと知己に「ふふふ」と含んだ笑いを見せた。
「先生……分かってるよね?」
「もちろんだ。これだろ?」
知己が指を1本立てる。
それを見て満足そうに章は頷き、
「約束の日時は、携帯で指定するね」
こっそりと敦達にバレぬよう囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!