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「で、今日はどうする?」
キャラメルマキアートを一口飲み、章が尋ねた。
「この後か?」
「うん」
言ってみれば知己は約束のキャラメルマキアートを奢った。今日の用は、もう済んだのだ。
「イチゴ大福買って、家で一緒に食べる」
章に問われるままに答えた。
さっさと家に帰って、将之と一緒に甘味でも食べて仲直りしたい。
「え? 家?」
章が一瞬驚いたような顔をした。
「なんだよ?」
文句でも言われるかと知己は身構えたが
「突然のイチゴ大福にびっくりしたけど、分かる。甘すぎず、いちごの酸味がいいよね。僕もイチゴ大福好きだから、先生がそうしたいと言うならそれでいいや。それよりも、おうちに招かれるなんて思わなかった。初詣の時は全力で拒否ってたから、嬉しい。ありがとう。それも僕が頑張ったご褒美?」
むしろ章は嬉しそうに微笑んでいる。
「え? ちょっと待て。どうしてお前がうちに来るんだ?」
「ちょうどいいと言えばいいよね」
「何が、ちょうどいいんだ?」
「だって、僕、今日の予定は……先生に抱いてもらう予定だったし」
「ぐ! ふっ、ほぅ……っ!」
章の発言に、知己は壮絶に咽た。
「わ、大丈夫?」
慌てて章は知己の方に回り込み、背を擦る。
「章がっ、変なこと、言うからっ……げほげほっ……気管に、入った……げほげほほっ」
「え? 僕? なんか変なこと言った?」
「言った……げほっ」
いまだに気管に入った不快感が拭えずに、その後も数度咳き込んだ。しばらくすると、なんとなく収まったようなので章は元の位置に戻った。
「で、何の話してたっけ?」
「……お前が俺に抱……、抱……、言えるか! 大人をからかうのもいい加減にしろよ」
「あ、その話ね。まだあるよ」
「まだ、あるのか……けほっ」
「咳、出るね」
「衝撃の章の予定だったからな」
「それだけど、僕の予定では、後、先生に僕の頭を撫でてもらうつもり」
「げほんげほんっ……なんでだ?」
「ご褒美」
「ご褒美が過ぎるだろう」
一体、章は何がしたいのだろう。
大体、もう用は済んだ筈だ。もう帰りたい。帰らせてくれ。
そう知己は思ったが、章の方は全くそうは思っていないようだ。
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