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「そんなことないよ。あんなに頑張ったんだから」
と、まだまだ知己を帰す気はない発言。
「頑張ったのは俊也じゃねえか。そういや、俊也達遅いな」
「なんで俊ちゃんが来るの?」
「俊也も敦も一緒に、がんばったご褒美にカフェじゃないのか?」
「先生と約束したの、僕、一人だよ。来るわけないじゃん」
「いや、確かに約束はお前とだけしたけど、頑張ったのは俊也だし敦も一緒に教えたし……って、あれ?」
ここでさっきしまわれたはずの違和感がひょっこりと頭を出した。
「なんかおかしいな。もしかして、あの『1』の意味は、お前一人だけ奢られようという意味の『1』か?」
章、なかなかセコいやつめ。
「違うよ」
「だ、だよな」
敦や俊也ほどでなくても、章も大抵のお坊ちゃまだ。キャラメルマキアートの一杯や二杯、一人だけ奢られようと画策するのも変である。
未だに分かってない様子の知己に、章はあの日の『1』の意味を告げた。
「今日一日僕に付き合って……の『1』だよ」
「はあああ?!」
その後、知己がまた盛大に咽た。
「じゃあ、先生んち行こうか!」
「行かない!」
「やれやれ。気まぐれな子猫ちゃんだな」
どちらかと言えば章の方が『子猫ちゃん』に値する容姿だが、そんなことは問題ではない。
「その言い方、やめろ。なんで俺がわがまま言っているみたいになってんだ?」
「別に場所なんてどうでもいいけど、今日の僕の予定を終えるまで帰さないからね」
章の予定というと、さっき言ってた
①章を抱く
②章の頭を撫でる
の二つだ。
「ふざけんな、誰がするか」
「だったら、いいよ! いつまでも帰れませんからね」
傍から見たら、年下攻めのトンデモナイ会話になっている。
愛らしい章に美しい知己。人目を引く二人故に、その会話に聞き耳を立てる周囲の人間が増えている気がする。
知己は周りの視線が気になった。
「場所、変えよう」
「家に行く決心着いた?」
「そんなものは初めからない」
仲良くケンカしている年の差カプに見える二人はカフェを後にした。
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