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黒トレンチの男も腕を組んで考えていた。
「うーん。一つだけ、『頭』で考えられる言葉があるけど……若い君達に教えていいものかどうか迷うな……」
ポソリと告げる。
「え? 何? やっぱりえっちな意味があるのか?」
三男に生まれついた為、同年代の子よりそういう知識は豊富と自負していた敦は自分の未知の領域に驚き、俊也は
「教えてください、ライオさん!」
素直に教えを請うた。
少し迷っていたが、二人の真剣な眼差しに負けたかのようにライオは重たい口を開いた。
「……きっと、頭は頭でも『亀頭』だね」
一瞬、時間が止まった。
「え? まさか!」
「祈祷? お祈り?」
真横の俊也を「ちっ」と舌打ち交じりに敦が睨むと
「俊也はどこまで馬鹿なんだ! 亀頭ってナニの先端のことだよ」
忌々しそうにそれでも教えた。
「え、ええええええええ?!」
「わぁ! 静かに!」
意味が分かった俊也が跳び上がりそうなほど驚いたが、時刻は昼前。
ますます増えた人に紛れて、前方の二人には気付かれずに済んだようだ。
「……つまり、章は自分のナニの先端を、あの悪徳セクハラ教師に撫でてもらいたいという、めっちゃアダルティなおねだりをしたってことになる」
顔を真っ赤にしつつも冷静を装って、敦がライオの言葉を説明した。
もう説明なぞしなくても、十分俊也には理解できていたと思われたが、説明せずにはいられない耳年増・敦のプライドが、そこにはあった。
グレーチェックのズボンの前を寛がせ、章が潤んだ瞳で
「ね、撫でてよ」
と知己の手を導く。知己は戸惑いつつも約束(?)だからと、やんわりとそこを握ると
「あっ……」
わずかに章は身じろいだ。
「ね、もっと。そこ、強く。んっ、あっ、ん……いっ……!」
幼さを残す高揚した頬が、やがて残っていたはずの知己の理性と背徳感を押し流し────……。
そんなイケナイ妄想が敦と俊也を襲った。
「……それって……、つまり?」
俊也が、もはや赤くなったらいいのか青くなったらいいのか、困惑の極みの表情を浮かべつつ言った。
「不純異性交遊は良くて停学。悪くて退学処分だ」
校則に無駄に詳しい敦が答えると
「異性じゃなくて、同性だけど?」
泣きそうな顔して俊也が突っ込む。同性ならば、少しは罪が軽くなるのかと期待でもしている。
「なお悪い! 不純同性交遊っ!」
俊也の指摘に敦が腹立たしそうに訂正を入れた。
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