知己を自由にしていい一日 4

4/5
前へ
/778ページ
次へ
「……阻止しなくては!!」  叫ぶライオに 「どうやって? ライオさん!」  敦はすがるような目をした。パニックが過ぎて、さすがの敦も何も思いつかないようだ。  それで俊也が 「俺、時間稼ぎに、先回りしてホテルの前に『本日定休日』の張り紙してこようか?」  と言ったが 「秒でバレる偽装工作はダメだ。しかも、俊也君。それ、ホテルの人に瞬殺されるヤツだから」  ライオは、冷静に対応した。 「そうか……じゃあ、どうする? ライオさん!」 「今、考え中だ。少し待ってくれ」 「だけど、二人はもうホテルの目の前だ。急いでくれ。……あ! ああっ!」 「どうした? 俊也君、応答せよ!」 「章の奴ぅ! 先生と腕を組んだ!」  俊也が怒りと嫉妬を滲ませて叫ぶ。 「ぬわにぃっ!?」 (ぬわにぃっ……? って……。あ、「何ぃっ!?」てことか)  ライオが敦の奇怪な言語を訳せた時、 「ライオさん……俺にアイディアがあります」  なぜか自嘲と涙を浮かべ、敦が提案した。 「何? 言ってみて」  何か考え出せるきっかけになるかもしれないと、期待を込めてライオが促す。 「ちょっと時間かかるかもだけど、俺の財力と権力でホテルの贈賄疑惑を浮上させ、イメージ最悪な噂をたれ流し、営業停止に追い込むことは可能だが?」  だが、出てきたのは敦の暗黒過ぎる力の召喚魔法だった。 「時間がかかり過ぎるし、それ、酷過ぎるからやめようね!」  年不相応な発言を一刀両断にして、ライオはまた現状の打開策を考え始めた。  しかし 「じゃあ、じゃあ、どうしよう? ライオさん!」  泣きべそかいた敦の声と 「うわー! どうしよう! このままでは二人が不純同性交遊してしまう!」  慌てた俊也の切羽詰まった声が、ライオを焦らせ、思考を曇らせた。  時は一刻を争う。
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加