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「昆布茶で煮込んだ国産豚肉のポトフでございます」
次に具沢山ポトフが運ばれてきた。
「もう将之に聞かない」
と知己が大きめのジャガイモを切りながら言うと
「それはそれでなんか寂しい気もするけど、助かったような気もする」
昆布茶の出汁が沁み込んだニンジンを味わいながら、将之が答えた。
「俊也と敦に訊く」
「あ、ちょっと待って。まだ口裏合わせてないから」
「ソレ、口裏って言ってる時点でダメじゃん」
依然、章だけは知己とのデートの邪魔をされたというのになぜか楽しそうにしている。
知己は視線を向かいに座る俊也と敦に移した。
「なんで、あの場にお前ら居たんだ?」
「えーっと……章をつけたら、先生に会った」
下手な誤魔化しは通用しないと踏んだ俊也は、素直に答えた。
「ふーん。なんで、僕をつけたの?」
その態度の潔さに章がにっこり微笑んで訊くと、今度は
「学校で……俊也の成績発表の時に二人で怪しいサイン出してたから」
敦が答えた。
「あれに気付くとは……さすが敦ちゃんだね」
章が驚いていた。バレてないと思ってたのだ。
「何、この子。ナチュラルに上から目線」
将之が感心したかのように言うと、章はにんまりと笑って見せた。
「……なんでも章は物理的にも心理的にもマウント取るの好きらしいぞ。だからこのホテルの最上階レストランで景色満喫したかったんだって」
「……ん?」
何か聞いていたのと話が違う……と、敦と将之は同時に俊也を見た。
俊也も「あ、あれ? 俺、変なこと言った?」みたいな顔をした。
「で、章が『えっちしてほしい』だの『亀頭を撫でてほしい』だの言っているから、二人が不純同性交遊するのではと心配になって。そんなことになったら、章も悪徳教師も大変なことになるらしいじゃないか」
「えっ……ち? き……とう?」
いきなり敦から飛び出したモーストアダルテックな単語に、知己が目を白黒させた。
「ちょっと待って! いたいけな17歳捕まえて、それはないわー。引くわー。いくら僕でも、そんなこと言わないよー!」
不本意だと章が喚く。
「少しは自覚あるんだな」
と、
(ああ。ポトフ食べ終わっていて良かった。あやうくまた咽る所だった)
と思いながら知己が言うと
「僕は先生にハグしてもらって、頭、撫でてほしいって言っただけ」
章がカフェでのおねだりを正しく主張した。
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