242人が本棚に入れています
本棚に追加
「で? 知らなくてもいい『き……(亀頭撫で)』とか『ロ……(ローション)』とか、こいつの所為で知ってしまったと?」
俊也はキョトンとしていたが、敦が手を挙げて
「先生ー! 年甲斐もなく照れて小声になると何を言っているのか分かりませーん!」
授業中の質問でもするかのように言った。
「うーん……。他にもまだ何か言ってた気がするけど」
「敦君、俊也君を止めて」
「痛っ!」
将之のアサインに素早く反応し、敦は手元のストローの袋で作った小さく丸めた弾丸を指で弾いて俊也の頬に命中させた。既に「脊髄反射」の域である。
(将之の奴……どんだけ敦を懐柔したんだ?)
驚きのチームワークだったが
「18禁ワード余罪が明るみに出た瞬間」
相変わらず章だけは楽しいツッコミを繰り返していた。
「まあまあ。どうせいつかは知るんだから。それがちょっと早まっただけじゃないですか? そんなに目くじら立てて怒ることでもないと思いますよ」
「お前、全然反省してないな……」
第三者的に将之が知己を宥めた時に
「開き直った瞬間でもあった」
と章が突っ込んだ。
睨む知己と知らん顔して過ごす将之。二人が険悪な雰囲気の中
「ちょっと訊きたいんだけど……」
俊也が将之に話しかけた。
「将之さんは、俺達を先生の生徒だと知ってて利用しようと思ってたのか?」
今度は少し考えて、将之は答えた。
「……利用とは、ちょっと違うね」
「違うのか?」
意外そうに敦が顔を上げて将之を見た。
「君たちが先輩の生徒で、かつ彼の友達と思ったから、一緒に協力して不純同性交遊を止められると思った」
また煙に巻く言い方を……と知己は忌々しく思っていた所に
「あのさ、先生……」
俊也がおずおずと話しかけた。
「俺が色々聞き間違えたのもあるんだけど。俺、その……やっぱり将之さんがそんなすっげー悪い人に思えない」
「そうか?」
知己には
(俊也達を煽って、妙な言葉まで教えて)
諸悪の根源としか思えずにいる。
「だって、勘違いだったけど、先生や章がやべえ事するのを一緒になって阻止しようとしてくれたんだよ? 俺達に親切に教えてくれたり、親身になって考えてくれたり。色々あったけど、将之さんと一緒に居てなんかすっげーハラハラワクワクして楽しかった。だから……」
(楽しければいいってもんじゃない)と知己は内心ツッコんだ。
「だから、あんまり怒らないでやってほしいんだ」
という俊也の言葉の最後に
「……俺からも頼む」
ぼそっと敦が付け足した。
最初のコメントを投稿しよう!