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「……っ!」
瞬時に知己は固まって、叫ぶのをやめた。
「心なしか、先輩のものが元気になっている気がする」
「……お前に触られている所為だろっ」
言うのも腹立たしいが、言い返さないのも腹立たしい。
「ふふ……」
「あ、おいっ……!」
将之がふざけて片手で緩くしごき始めた。もう片方はリップを近づけたまま脅している状態だ。
「おやおや。暴れるのもお勧めしませんが大きくするのもやめた方がいいですよ。リップにくっつきそうですから。そうなると、僕の責任ではないですよね?」
「………っ……」
わざと興奮するように触っておきながら、この状況楽しむ将之に屈したくはなかった。
「……最低っ」
反射的に罵っていた。
「教え子に手を出す方が、最低」
将之は、知己の筋をこすっていた親指を緩やかに先端へ移動させて、敏感な部分に触れた。
「あ、っ……!」
びくりと腰が震える。
にちゃ……と粘液がこすれる音がした。
既に知己の先端は濡れていた。
「これが章君のしたがってた亀頭撫でですね」
「あ、……やっ……!」
ぬるぬると煽るように、将之は指の腹を滑らせる。
「悦んでないで、早く言ってください。言わないと指ではなく、次はリップを押し付けますよ」
すっかり変化したそれに満足したような上ずった声。
「粘液に付着すると、それはそれは想像を絶する痛みなんでしょうね」
「……ひ、ぅっ……」
思わず息を飲んだ。
「僕は、かまいませんが?」
「……ちゃんと話すから、それは遠ざけてくれ」
知己が少しでも身動ぎしても、うっかり将之の手元が狂っても大変な事態を招きかねない。
「いやですよ。先輩が話すのが先」
「……ぅ」
悔しいが、この状況ではどうしようもできない。
知己は深いため息をひとつ吐いて、
「敦を撫でたのは……なんとなくの成り行きで。確か、6月か7月の頃……あいつが詳しくは言えないけどよくないことしてて、でもそれを俺にちゃんと話した時に」
もはや薄らいでいた初夏の記憶をたどたどしく話し始めた。
「ふーん。先輩を信用して、ちゃんとお話した敦君はさぞや可愛かったでしょうね」
揶揄うように言う将之に
「違う!」
知己は反論した。
「可愛いとかそんなんじゃない。あいつがすごく反省したみたいでしょげてて、なんだか小さい子……甥っ子みたいに思えて『元気出せ』って意味で、つい撫でてしまったんだ」
「つい……でやっていいことじゃないですよね? 過剰なスキンシップですよ」
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