★いけないリップスティックマジック

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 将之は、リップにキャップをして見せた。 「先輩の嫌がることを、僕がすると思っているんですか?」 (これまで、散々してきたくせに!?)  恐怖と快楽を同時に叩きつけられて涙目の知己は、縦に首を振るべきか、横に振るべきか悩んだ。  沈黙する知己を特に気にせずに将之は 「ふふ……。こんなに元気になっちゃって、可愛い……」  己の舌技に満足そうだ。  とりあえず、亀頭にメントールはなさそうだ。 「……ぅ、ん……っ」  安心すると、妙に腰にたまる甘く切ない疼きに意識が行く。  先ほどの恐怖で身を縮めていたものだから、猶更、どっと疲れが押し寄せた。  抵抗する気力も根こそぎ奪われ、執拗に弄ったり口に入れたりと楽しむ将之の好きに任せるしかできない。  不意に将之が 「あ、そうだ。敦君を撫でたのは分かりましたが、もっとすごいこともしてたでしょ?」  と尋ねてきた。 「もっと……すごい……こと……?」  朦朧とした頭に言われたことがピンとこずに知己は問い返した。 「ハグしたこと」 「あ? ……あぁ」  くたりと弛緩した体を投げ出し、知己は考えた。 「そんなこと……したかな?」  ぼそりと呟いたのが、よくなかった。  知己としては本当に思い出せずに呟いただけなのだが、 「この期に及んでしらばっくれるんですか?」  怒った将之が知己の両足を担いだ。  そのままぐぅっと高く掲げて肩に掛けると、知己の双丘の狭間の窄まりが晒された。 「粘膜はここにもあるっていうのお忘れですか? こっちの方がすぐには拭えません。つけられると地獄の苦しみが続くと思いますけど?」 「やっ……!」  両手の親指で押し広げられる。  あの恐怖が再び訪れた。  今「先輩の嫌がることを、僕がすると思っているんですか?」と質問されたら、間違いなく首を縦に振ることだろう。 「や、やめっ……!」  慌てる知己に構わずナイトボードから、いつも使っているローションを一垂らしする。突然の液体の冷たい感触に知己がわなないた。 「ひ……」  その後、ずくりと明らかに指くらいの太さ……だが明らかに生き物の体の一部ではない無機質な形状を感じて 「い、やぁぁっ!」  知己は腰を弾ませて、叫んだ。 「やっ……! 抜け、将之ぃ!」  涙目になって叫ぶと 「さっきも言いましたけど、先輩が喋る方が先です」  ばたつく太腿を平然と担いだまま、冷酷に将之が言った。 「え……えっと……あ、ぇ……あ!」  後ろが、かぁっと熱くなった気がした。知己はその刺激に目が覚めたかのように記憶を蘇らせた。
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